空き家問題への読者の関心は高いようで、前回の記事に対しても様々なコメントをもらった。その中には、「更地にして売却したが建物の解体費を差し引くとマイナスになった」「売値が付かない不動産をどうすればいいか」といった声もあった。実は、そういった状況に対応する制度が新設されるが、まだあまり知られていないようだ。その他、筆者が温めているアイデアも含めて、空き家解消を後押しするには、大きく3つの方法が想定されると考えられる。

使い道のない土地を国に引き取ってもらえる制度が来年以降に創設される予定であることをご存じだろうか。「相続土地国庫帰属制度」と呼ばれるものである。
2021年4月に成立した「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「相続土地国庫帰属法」という)による制度で、空き家になっている実家などを相続した場合に、法務大臣が承認すれば、土地の所有権を国に帰属させることができるというものだ。
ただし条件がいくつかある。まず、建物は自費で取り壊さなければならない。加えて、土壌汚染や崖などがない、権利関係に争いがない、担保権などが設定されていないといった条件も満たす必要がある。加えて、審査手数料と10年分の土地管理費相当額の負担金も支払わなければいけない。10年分の土地管理費相当額とは、粗放的な管理で足りる原野などで約20万円、市街地の宅地(200㎡)で約80万円とされている。
制度が創設される背景には、空き家問題だけではなく、「所有者不明土地」問題が新たな社会課題として注目されていることがある。相続などによって所有者が変わったのに、不動産登記簿では古い所有者のままである所有者不明土地が、災害復旧などのための用地取得に支障をきたしている。東日本大震災の際も、仮設住宅や堤防、道路などの復興のための土地の取得が、登記簿上の所有者が死亡しているために、相続人などを探し、同意を得ることに非常に手間と時間がかかったことが問題となった。
所有者不明土地が占める割合は、空き家率よりも高いという見方もある。一般財団法人国土計画協会の所有者不明土地問題研究会が2017年12月に発表した最終報告概要によれば、九州本島よりも広い約410万haにもおよび、2016年度の地籍調査において、登記簿上の所有者の所在が不明な土地は20.1%とされている。2018年の住宅・土地統計調査の空き家率は13.6%だったから、これを上回る。さらに2040年には、所有者不明土地は北海道本島に迫る約720万haに拡大すると予測されている。
もっとも、登記簿上で所有者の所在が確認できないだけであって、相続人などが見つかるケースは多い。国土交通省の2019年の資料によれば、登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合(所有者不明土地の外縁)は確かに約20%だが、「探索の結果、最終的に所有者の所在が不明な土地(最狭義の所有者不明土地)は0.41%にすぎない」ともされている。とはいえ、今後、多くの人が亡くなり、相続時に登記がなされなければ、所有者不明土地が増加していき、問題が大きくなることは容易に想像できる。そこで、相続登記の義務化と合わせてこの制度ができたわけだ。
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