持ち家か賃貸かの議論は非常に関心の高い話題だ。その中で、住宅ローンを返済できなくなるリスクがゼロではないことから、持ち家より賃貸のほうがよいとする考え方もあるようだ。ただ、賃貸で家賃が払えなくなるリスクと、持ち家で住宅ローンの返済が滞るリスクを定量的に比較することはかなり難しく、議論に決着はつきにくい。今回はこの返済不能リスクがどれほどのものなのかを検証してみよう。

(写真:yasu/PIXTA)
(写真:yasu/PIXTA)

 2022年3月18日に公開した本連載の記事「住宅ローンは“強制積み立ての個人年金” 配当は老後の家賃相当分」で、「筆者の研究では、家賃の滞納率は4カ月以上の長期滞納が全体の0.7%を占める。住宅ローンの滞納も同程度のようだ」と書いた。賃貸で家賃を払えないリスクと、持ち家で住宅ローンの返済が滞るリスクを比較するのは容易ではない。しかし今回は、独立行政法人住宅金融支援機構、そして主に地方銀行の住宅ローンの保証を行っている全国保証が公表しているデータを用い、住宅ローンのリスク、すなわち延滞率について検証してみよう。

住宅金融支援機構の延滞率は低下している

 住宅金融支援機構は、住宅金融公庫が2007年に独立行政法人化された組織で、民間金融機関が長期固定金利の住宅ローンを提供できるよう、住宅ローンを債権化した「フラット35」などの証券化支援業務を中心に行っている。

 独立行政法人化により証券化支援業務の比重が大きくなったことで、貸付残高も2007年の約426兆円が2021年には約255兆円に減少している。その貸付残高のうち、「破綻先債権」「延滞債権」「3カ月以上延滞債権」に区別してそれぞれ金額が統合報告書などで公表されており、ここから金額ベースの延滞率が計算できる。

 そこで筆者は住宅金融支援機構のウェブサイトから入手できる情報を整理し、延滞率を算出した。下のグラフは、貸付残高合計に対する上記3つの債権の合計の比率(実線)、また、さらに元本返済の延期など「貸し出し条件緩和債権」の貸付残高を加えたものの比率(点線)の推移である。

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 貸し出し条件緩和債権を含めた延滞率は2007年から2010年にかけて8%を超える高水準で推移し、貸し出し条件緩和債権を除いた破綻先・延滞・3カ月以上の延滞債権の比率も3%を超える状態だった。それが、2019年に向けて大きく下がった。新型コロナウイルス禍の影響もほとんど受けていないようで、貸し出し条件緩和債権を含めた延滞率は3.2%程度、貸し出し条件緩和債権を除いた破綻先・延滞・3カ月以上の延滞率は1%強の水準にとどまっている。

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