そして「近隣に迷惑をかけるようなら固定資産税が上がったとしても取り壊すつもりである」に対して「とてもそう思う」が13.0%、「ややそう思う」が39.1%、あわせて52.1%と過半数に達する。しかし、「取り壊そうと思っても、取り壊すためのお金を工面できない」に対して、「とてもそう思う」が19.6%、「ややそう思う」も36.4%とあわせて56%を占めている。
近隣に迷惑をかけるなら空き家を取り壊すつもりだが、そのためのお金を工面することに苦労しているというのが地方の人口減少地域の実情といえる。そんな中でも、冒頭で紹介した兄弟のようになんとか資金を確保して、近隣の迷惑にならないように滅失を進めているわけだ。
ちなみに、筆者の出身地の自治体は人口が約1万7000人、世帯数は約9000。筆者の試算では空き家数は約500軒弱とみられる。「空き家問題の解決のために、空き家の活用を」という掛け声がよくあるが、人口も世帯数も減少している町で、それだけの数の空き家を利活用することに現実感があるだろうか。私は、多くの地域における空き家問題の解決策は空き家の利活用ではなく、個々の所有者のモラルによる空き家の滅失が重要であると考えている。
都市の老い-人口の高齢化と住宅の老朽化の交錯-:斎藤誠(編著)(第4・5章を筆者が執筆) 勁草書房 2018年1月
国土交通省(2020)「空家法施行から4年半、全国で空き家対策の取組が進む~空き家対策に取り組む市区町村の状況について~」
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