これより前の2008年から2013年の5年間を見ると、総戸数が減少した自治体は300(同24.1%)。戸数や世帯数ベースでは全国の約15%にすぎなかった。つまり人口減少地域において、住宅が減るペースは加速している。空き家数が減少に向かい、空き家問題が解決の方向に向かっている自治体があることを示している。

住宅の滅失は制度ではなく個人のモラルに依存している

 住宅総数が減少している自治体が全体の4分の1近くになっていることは、ほとんど知られていない。では、どのようなメカニズムで住宅が減少しているのだろうか。

 すぐに思い浮かぶのは、時々ニュースで流れる自治体による強制代執行だろう。

 これは2014年に成立し2015年に施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特措法)」に基づく措置だが、国土交通省の2020年4月の発表資料によれば、代執行は全国で196件にすぎない。代執行以外では、助言・指導が1万7026件、勧告が1050件、命令が131件となっている。近隣に迷惑をかける可能性が高いと認定された「特定空き家等」で除却に至った件数は7552件であり、認定前に所有者等により除却された件数が最も多く、約7万7000件に上っている。

 ちなみに特定空き家等は全国で約1万6000件となっているが、2018年住調の住宅総戸数6240万7000戸に対する比率はわずか0.026%にすぎない。空き家の総数は800万以上と報道されているが(もっとも、筆者は過大に計上されていると考えている。連載第2回参照)、その全てが近隣に迷惑をかけているような状態ではなく、実害のある空き家の数は極めて少ないのである。

 加えて、空き家対策特措法で把握されている空き家以外の滅失件数はさらに多い。住宅戸数が減少している自治体の2013年から2018年の5年間の減少数は、約39万戸となっている。こういった自治体でも新築着工が行われていることを考えれば、この5年間で滅失された建物は数十万戸の規模に達する可能性が高い。

 そして、この滅失は個々の所有者のモラルによって行われていることが強く示唆されている。下表は、『都市の老い』に掲載されている、筆者が2013年に実施したアンケート調査の結果の一部で、実家などの空き家を実際に保有している470人の回答を集計したものである。

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 「固定資産税が上がるくらいなら、近隣に迷惑をかけても放置していた方が良いと思う」という設問に対して、「とてもそう思う」のは4.3%しかおらず、「ややそう思う」も19.4%と比較的少ない。このことは、住宅が建っていると固定資産税が6分の1に軽減される税制が必ずしも空き家放置の要因にはなっていないことを示唆している。