一時期ほど頻繁に取り上げられるわけではないが、依然として空き家問題への関心はそれなりにあるようだ。本連載の2回目でも指摘したように、実際の空き家数は住宅・土地統計調査による全国約800万戸を大幅に下回っている可能性が高いが、それでも地方の人口減少地域で空き家が増えているのは事実だ。一方、筆者の研究では、地方の人口減少地域で、住宅数そのものが減少している地域があることが確認されている。今回は、地方の人口減少地域で空き家が滅失され、空き家問題が一定程度解決に向かっている可能性があることを説明したい。

(写真:PIXTA)
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 私の出身地である福岡県北東部の田舎町で、最近、小学校の同級生の実家が空き家となり、相続した兄弟がお金を出し合って更地にしたと聞いた。「墓じまい」ならぬ「実家じまい」である。

 子どもたちがみんな都会に出てしまい、年老いた両親が亡くなると誰も住まない家だけが残る。これが世間でいわれる「空き家問題」の代表的な例である。「空き家」で検索すると大量のニュースが表示され、ほぼ毎日なんらかの報道がなされていることが分かる。

 人口の大都市への一極集中と地方の過疎化が進み、空き家が加速度的に増えているような印象を抱いている読者もいるかもしれない。しかし実態はやや異なる。5年ごとに行われる住宅・土地統計調査(住調)によれば、空き家数は、2008年の757万戸に対して2013年は820万戸と63万戸増えた。2018年にはさらに849万戸へと増加しているが、5年間の増加数は29万戸と半減している。

 連載第2回で指摘したように、住調では空き家数も空き家率も過大に推計されている可能性が高いと筆者は考えている。しかし、調査自体は同じ手法で長年行われており、全体的なトレンドが大きく間違っているわけではない。空き家の増加数が抑制された理由は明確ではないが、筆者は人口減少地域で古い住宅の滅失が進んだことが1つの要因ではないかと考えている。

 住調と同じ年度の住民基本台帳世帯数を組み合わせて、5年間の住宅総数と世帯数の増減を区市町村ごとに集計してみると、興味深い結果が得られる。

 2013年から2018年の5年間で、世帯数も総戸数も増加した自治体は804(全体の64.9%)だった。一方、世帯数が減っているのに総戸数が増えた自治体は85(同6.9%)あり、ここでは空き家が発生している可能性がある。 注目したいのは表の下段の2つで、いずれも総戸数が減少している自治体だ。2つを合わせると自治体数で349(同28.2%)となる。ちなみに戸数や世帯数で見ても、集計対象自治体の約4分の1だ。

 詳しくは筆者が著者として参加している『都市の老い~人口の高齢化と住宅の老朽化の交錯~』(勁草書房:2018年)を参照いただきたいが、総戸数が減少している、ということは住宅が滅失され始めていることを示している。既に日本では人口減少地域で住宅が減る時代を迎えているのだ。

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