前回の記事では、都市部の住み心地の良さが“適度な無関心”による緩い人間関係に支えられており、地方でも、一定規模の人口流入が地域に新しい住民への受容性を生み、幸福度の向上につながる可能性について説明した。もとより、地方の濃密な人間関係を一方的に非難するつもりはなく、濃密な人間関係が幸福度を明確に下げているわけでもないことは強調しておきたい。また、人間関係が濃密な場所ニも、そこに住み続けたいと思っている人はたくさんいる。今回は、「住み心地の良い街」と「住み続けたい街」の調査結果に差が出る理由を考えてみたい。

筆者が企画・設計・分析して、発表している「街の住みここちランキング特別集計 街の幸福度&住み続けたい街ランキング2021」を見ると、「住み続けたい街」の上位には大都市ではない意外な街が多くランクインしている。

首都圏の上位は神奈川県が多く、1位は葉山町、2位が逗子市、3位が鎌倉市となっている。関西1位は大阪府の東端、京都府との府境にある島本町で、2位が兵庫県芦屋市となっている。東海1位は愛知県長久手市、2位は三重県伊勢市で、3位は静岡県清水町だ。
北海道1位は札幌市中央区、2位は同厚別区で3位は十勝地方の音更町、東北1位は仙台市のベッドタウンである宮城県富谷市で2位は岩手県矢巾町(盛岡市の南)、中国地方でも1位が岡山県総社市、2位が広島県府中町となっており、四国1位は徳島県鳴門市、2位は香川県三木町となっている。九州・沖縄は本稿発表時点では未発表だが、いずれも上位は大都市ではない。
街を対象としたランキングはいくつもあり、住みたい街と住み心地の良い街が食い違うのは、イメージとしての人気ランキングの住みたい街と、知名度とは関係のない住民評価の違いであることは容易に想像できる。しかし、住み続けたい街と住み心地の良い街が食い違うのは、なぜなのだろうか。
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