前回の記事では、都会には似た者同士が集まる構造があることを解説した。典型的なのは、勉強ができる子どもたちが東京に出てきて、勉強ができるパートナーと出会い家庭をつくっていくといったものだ。都市と地方では、商業施設や飲食店の密度など生活利便性の違いも大きいが、人間関係の違いも大きい。簡単に言えば、都市の人間関係は比較的希薄で新しい住民もなじみやすいが、地方の人間関係は濃密で、移住者が地域コミュニティーとの関係づくりに悩むことも多い。そして、それは地方で生まれ育った若者にとっても負担となっている。筆者の過去の研究からは「親しみやすさ」が住民の幸福度を向上させることが見えており、そのためには外部からの人口流入が必要だ。

(写真:PIXTA)
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 筆者は、全国を対象として50万人以上から回答を得た「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」を企画・設計・分析しており、「街の住みここち」「街の幸福度」「住み続けたい街」といったランキングを発表している。

 データを分析してみると、ある興味深い結果が得られた。都市と地方には埋められない居住満足度の差があるが、一方で幸福度にはあまり差がないのだ。

圧倒的に高い都市部の住み心地を支える“適度な無関心”

 筆者の2019年の論文「居住満足度の構成因子と地域差の実証分析」では、街の居住満足度を構成する因子は8つあること、その中で「親しみやすさ」因子が最も影響が大きく、かつ、政令市と中核市(県庁所在地および人口20万人以上の市)、その他の市、町村で評価に大きな差があることが示されている。

居住満足度と因子の関係および幸福度
居住満足度と因子の関係および幸福度
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 都市規模別の分析結果である上の表を見ると、住み心地、すなわち地域の居住満足度は、政令市を1とすると中核市は0.96、その他市は0.88、町村は0.89と低くなっている。

 居住満足度に与える影響は、「親しみやすさ」が最も大きく、政令市の「親しみやすさ」を1とした場合、中核市では-0.22、その他の市では-1.80、町村で-1.62と政令市以外の評価が極端に低い。この親しみやすさとは、「気取らない親しみやすさ」「地元出身でない人とのなじみやすさ」「地域の繋がり」「近所付き合いなどが煩わしくないこと」「地域のイベントやお祭りなど」といった要素を含んでおり、分かりやすく言えば、地域のお祭りで見知らぬ子がいても、「どこの子?」などと詮索しないような、新しい住民を受け入れる受容性のことである。

 こうした受容性は、ジェンダーフリーやマイノリティーへの包摂、寛容性といった話ではなく、もっとシンプルで、適度な無関心と距離感によって形成された緩い人間関係、ということになる。地方では、生まれた時からのことをお互いに知っているのが当たり前、という世界もあるが、それを押しつけず、たまに見かける、住んでいる場所も知っているが名前は知らない、といった人がいる状態を受け入れる、ということが重要なのだ。

 そして、親しみやすさだけではなく、生活利便性や交通利便性にも都市と地方では大きな差がある。これは社会資本の格差であり、全ての地域で差を埋めていくことは現実的ではない。

 こうした親しみやすさや生活利便性の低さが、若者が地方から都市部へ流出し、戻って来ない大きな理由になっていると思われる。実際、筆者の2021年の論文「個人属性および価値観・街への志向性を使った居住満足度の推定」では、多くの人にとって地方に住むよりも都会に住んだときのほうが居住満足度が高まるという推定結果が得られている。「住めば都」という言葉があるが、生まれ育った場所が必ずしも住みやすいというわけではないのだ。

続きを読む 2/3 目指すべき地方創生は「幸福の格差」の解消

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