日本では高齢化が進み、2020年国勢調査によれば65歳以上の人口比率は28.7%となっている。2018年の住宅・土地統計調査によれば65歳以上の高齢者世帯の持ち家率は80.6%と非常に高い一方で、2019年の国民生活基礎調査によれば65歳以上の高齢者世帯の平均世帯年収は約312万円と、全世帯平均の約552万円よりも低く、児童のいる世帯の約745万円の半分にも満たない。このため高齢者の所得の不足を、持ち家を使って補う金融サービスとして、リースバック、リバースモーゲージ、不動産担保ローンが生まれた。今回は混同しがちなこの3つの違いとリスクについて解説する。

(写真:PIXTA)
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 2022年6月24日、国土交通省は「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表した。リースバックは、リースバック事業者に持ち家を売却し、持ち家だった家に新たに賃料を支払うことで住み続けられるシンプルな仕組みだ。にもかかわらず、国交省が2021年12月から「消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会」を開催したのは、消費者とリースバック事業者間でのトラブルが多かったことが背景にある。

 実際、独立行政法人国民生活センターが2021年6月24日に発出した報道発表資料「高齢者の自宅の売却トラブルに注意―自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください―」では、年間600件前後の相談が国民生活センターと全国の消費生活センターなどに寄せられているとされ、以下のような記載がある。

  • * リースバック契約では、自宅の売却価格が物件相場に比べて低くなることがあります。
  • * 賃貸借契約の期間(数年間)を定められる場合が多く、そのままずっと住み続けられる保証はありません。
  • * 賃貸借契約の家賃が相場より高額に設定されてしまうことがあります。また、契約更新時に家賃を値上げされることも考えられます。

 これらの記載を見れば、リースバックには一定のリスクがあることが分かる。

 売却価格と賃料などを試算してみよう。

 例えば評価額5000万円の持ち家が8割の4000万円で売却できたとする(上記の国民生活センター資料に基づき、相場より安いと仮置きした。これより高い金額で売却できる可能性もある)。もともとの評価額である5000万円の約5%の利回り賃料である月額20万円で借りると、17年たたないうちに4000万円が賃料だけで消えてしまう。

 仮に売却価格4000万円のうち半分を生活費などに充てたとすると、残りの2000万円で賃料が払えるのは、8年強になる。つまり8年後に蓄えが尽き、月20万円の賃料が払えなければ、住み慣れた家を出ていくしかない。

 厚生労働省が毎年発表している令和3年(2021年)簡易生命表によれば、65歳時点の男性の平均余命は約20年、60歳時点の女性の平均余命は約29年となっている。平均余命を考えると、リースバックでは、存命中にリースバックした賃料を払えなくなるリスクが低いとはいえないだろう。

 では、似たような名称のリバースモーゲージはどうだろうか。

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