(写真:PIXTA)

 世の中では「幸せになる○○」とか、「○○の幸福論」といった書籍が多数出版されており、セミナーやサロンも開催されているようである。しかし、それらの書籍やイベントの内容が、一定の汎用性があるものなのか、個人の経験を基にした個別事例にすぎないのか、科学的根拠に基づいているものかどうかは定かではない。

 もとより幸福度・幸せというものは、個々人が心の内に感じ取るもので、物理的に計測できるものではない。それでも、一定の定量データに基づいた研究が行われている。

 研究では、例えば自分自身が非常に不幸だと感じている場合を1、非常に幸福だと感じている場合を10として、幸せだと感じている度合いについての回答を得るようなアンケートデータを用いることが多い。こうした感覚は主観的幸福度と呼ばれ、これに個々人の年齢や性別、未既婚、子どもの有無、職業や年収といった属性を加えて、統計的に分析される。

 こうした手法を用いた研究の代表的なものとしては、大阪大学大学院経済学研究科の大竹文雄特任教授らによる『日本の幸福度』(2010年)などがある。筆者も、住まいと幸福度の間には関係があるのではないかと考え、2018年に「住まいが主観的幸福度に与える影響」という論文をまとめた。

何が幸せを決めるのか

 この論文は、首都圏の1都3県在住の1万2608名から回答を得たアンケートデータを基にしている。回答者の平均年齢は45歳、平均世帯年収は654万円、平均世帯貯蓄額は971万円で、首都圏在住者としては平均的なものとなっている。

 主観的幸福度の平均は10段階で6.57だった。属性別では65歳以上が7.29と高く、孫ありも7.18、既婚者が7.04と7を超えた。子どもありは6.97、女性が6.77でここまでが平均よりも高くなっている。また、世帯年収800万円超や世帯貯蓄額1000万円超も幸福度が7を超え、持ち家の場合も6.97と平均よりも高い。

 これら属性別の平均値(こうした集計をクロス集計という)だけを見ると、年を取れば幸福度は上がるし、お金があるほうが幸せになるのは当たり前だろう、ということになるが、これは正しい理解ではない。

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