「新築か中古か」という議論は、「持ち家か賃貸か」という議論と並ぶ不動産選びの大きなテーマだ。しかし現実として、最近は中古マンションを選択せざるを得ないケースが増えている。本連載の第17回で紹介した首都圏の新築マンション価格高騰に加え、タワーマンションの供給が増加していることもあって、新築マンションが販売される場所はかなり限定されるようになってきているからだ。そういった背景もあり、築年数が古い中古マンションのリノベーションに注目が集まっている。しかし実は、中古マンションにはあまり知られていないデメリットがある。

(写真:PIXTA)
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 マンションに関する情報はかなり整理されており、国土交通省のホームページには「マンションに関する統計・データ等」というページがある。その中の「分譲マンションストック戸数」によれば、全国のマンション戸数は令和2年(2020年)末時点で約675万3千戸。そのうち昭和56年(1981年)以前に建てられたいわゆる旧耐震基準ストックと呼ばれるものは、約103万戸あるとされている。

 国交省は「築後30、40、50年超の分譲マンション戸数」もそれぞれ発表しており、築30年超、すなわち平成3年(1991年)以前のものは231万9千戸と全体の約3分の1を占めている。また、平成22年(2010年)以降は新築マンションの供給が年間10万戸程度に減少したまま回復していない。住みたいと思った場所に新築マンションが供給されていないことは意外に多いのだ。

 東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)が発表した資料で2022年1~3月の築年別取引件数をみると、首都圏全体では築25年以上(1996年以前築)の比率は39.4%、築20年以上(2001年以前築)は50.8%となっている。これは戸建ても含んだ数値ではあるが、中古マンションの取引の過半数は築20年以上の物件と言っても差し支えないだろう。

リノベーションしようにも交換できないドアとサッシ

 築古物件が増え続けるのには、マンションの建て替えが極めて困難だという背景がある。国交省の「マンション建替の実施状況」によれば、建て替え工事が完了した物件数は全国で累計263件にすぎない。

 その代わりに近年はマンションのリノベーションが一般化している。購入者が大規模リフォームをするケースに加え、業者が中古マンションを買い取ってリノベーションして販売する、いわゆる「再販物件」も増加している。

 リノベーションの中には床や壁、天井まで取り払って一新するものもあり、間取りも内装もキッチンなどの水回り設備もすべて新しくなっていて「新築物件と遜色ない」というのがうたい文句だが、実はそんな大掛かりなリノベーションでも手を加えられない部分がある。窓のサッシと玄関ドアだ。

 これは、ほとんどのマンションの管理規約でサッシと玄関ドアは共用部であり、自由に交換できないと規定されているためである。分譲マンションの所有形態を規定した区分所有法の成立は昭和37年(1962年)と60年も前のことだ。そして旧建設省が昭和57年(1982年)に公表した中高層共同住宅標準管理規約には、「玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする」「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする」と記載されている。