前回の記事では、筆者が企画・設計・分析を行っている「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」の調査結果から、新型コロナで街の評価が大きく変わったということはなく、むしろ、今住んでいる場所に対する再発見・再評価が起きていることと、街の住みここちと人口増加には正の相関関係があることを示した。
 そして近年では、街に対する誇りを意味する「シビックプライド」という概念に注目が集まっている。今回は、シビックプライドとの関係を含め、街の住みここちとはいったい何なのか、その構造を解説してみたい。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 筆者が企画・設計・分析を行っている「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」は、2019年から発表しており、今年で3回目となる。3回の累計で全国50万人以上の回答を集めたビッグデータである。

 この調査には、街に対する60の評価項目がある。このうち2019年と2020年で共通の55項目について約35万人分のデータを対象に、因子分析という統計手法で分析すると以下の8つの因子が特定できた。いずれの因子も、比較的イメージしやすく、こうした要素で街の住みここちが構成されているであろうことに、あまり異論はないと思う。

  1. 生活利便性因子:飲食店やコンビニエンスストア、スーパーや量販店といった生活関連施設の充実度といったもの
  2. 交通利便性因子:幹線道路・高速道路へのアクセスや都心への近さ、通勤・通学の利便性といったもの
  3. 行政サービス因子:子育て施設や小中学校といった教育、医療や介護など
  4. 親しみやすさ因子:「気取らない親しみやすさ」「地元出身でない人のなじみやすさ」「地域のつながり」「近所付き合いなどが煩わしくないこと」「地域のイベントやお祭りなど」
  5. イメージ因子:おしゃれさや高級感・ステータス、再開発などの街の将来性など
  6. 静かさ治安因子:閑静さ、治安の良さ、街並みのきれいさなど
  7. 物価家賃因子:家賃や不動産価格の安さ、物価の安さ
  8. 自然観光因子:自然の充実度、観光地や景勝地などの充実度

 興味深いのはここからである。この8つの因子を説明変数(物事の原因)、街の総合的な評価(これが住みここちである)を目的変数(物事の結果)として、重回帰という統計手法で分析すると以下のような結果が得られた。

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