世帯年収が高く、貯蓄額が高いと家賃滞納が3カ月に至る確率が低くなる一方、生活保護受給と「人間関係因子」の弱さが家賃滞納に関係していることも分かった。ちなみに2015年の論文でも生活保護受給世帯の滞納率が、他の条件が同じ世帯よりも5.26倍高いことが示されている。

 このような結果を解釈すれば、住まいを失うことにつながる3カ月以上の家賃滞納リスクは限定的なものであり、誰にでも無視できない確率で起きうる普遍的なものとは言えないだろう。しかし逆に言えば、家賃滞納が3カ月以上に及ぶことを、自己責任だと言い切るのには無理があるのではないだろうか。世帯年収が低く、貯蓄額も低いというのは典型的な社会格差の一つであり、社会のひずみの結果だと言えるからである。

 そして、深刻な家賃滞納を放置すれば、社会全体のコストは上昇していく。日本では持ち家率が高いため、賃貸住宅を中心とする住まいのセーフティーネットは、多くの人にとって自身へのメリットを感じにくく、社会的な関心を得にくい。しかし家賃滞納について関心を持ち、社会的な解決の仕組みを考えることは、家賃滞納に無縁である人々にとってもコスト負担を減らし、安定した社会をつくるというメリットにつながるのである。

 もっとも「だからこそ生活保護というセーフティーネットがあるのではないか」と思われるに違いない。確かに生活保護受給世帯には「住宅扶助費」が支給されているが、生活保護受給世帯の住まいには「住宅の質が悪いのに、割高」という大きな問題が存在している。次回はなぜそのようなことが起きているのかを考えてみたい。

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