持ち家は本当にノーリスクなのか

 こう話すと、「住宅ローンを返せなくなったら大変だ」「実際に住宅ローンが払えなくなり、物件を売却してもローンを返済することができなかった、といった例もあるではないか」という意見が出てくるだろう。しかし、これはECF(Extreme Case Formulation=極端な事例による構成)、といわれる表現手法であり、それが起きる確率を無視している。要は個別事例の安易な一般化にすぎない、ということである。

 筆者の14年の論文「民間賃貸住宅における家賃滞納の定量分析」では、家賃滞納率は件数ベースで3.5%程度、破綻していると言ってよい4カ月以上の滞納率も1%弱あることが示されている。

 一方、住宅ローンの滞納率はどうか。住宅金融支援機構の20年度投資家向け説明資料によれば、延滞債権の総貸付残高に占める比率は1.26%であり、破綻先債権額の総貸付残高は0.27%にすぎない。しかも、家賃は収入が減少したからといって家賃を減額してくれるケースはほとんどないと思われるが、住宅ローンの場合には貸し出し条件緩和という措置がある。前述した住宅金融支援機構の資料によれば、金額ベースで1.67%が適用を受けている。メガバンク等の場合には住宅ローンの審査が住宅金融支援機構よりも厳しいと考えられ、住宅ローン全体で見れば、おそらく破綻率は極めて低い水準にとどまるだろう。

 住宅ローンのリスクを高いとみるか低いとみるか、個人によって判断が分かれるとは思う。しかし少なくとも、住宅ローンの滞納率は家賃の滞納率よりも低いことは確実といえる。この違いは、家賃は安易に滞納する人が多いことに対して、住宅ローンは強い義務感を伴ういわば強制的な貯金に近いという理由もあるだろう。そして、住宅ローンの審査に通過するということは、金融機関が、あなたの人生が確率的にある程度うまくいくであろう、と認めたということでもある。