2018年の住宅・土地統計調査(以下「住調」という)によれば、持ち家率は全年齢対象で61%だが、当然、年齢によって大きく違う。20歳代:6.4%、30歳代:35.7%、40歳代:57.6%、50歳代:67.6%、60歳以上:79.8%となっており、年齢の上昇とともに持ち家率は上がっていく。

 そして、国立社会保障・人口問題研究所が16年に実施した第8回人口移動調査によれば、5年前の居住地が現住地と異なる人の割合は、25-34歳では50%を超える。これは毎年約10%の人が引っ越していることを意味するが、年齢が高くなると急激に低下。45歳では20%を下回り、引っ越し率は年率で4%未満になる。

 この結果を素直に判断すれば、世の中の人々は持ち家を選択する人が圧倒的に多く、中高年になればほとんど引っ越さなくなる、ということになる。世の中の人々の行動の結果では、持ち家vs賃貸論争は、持ち家派の勝利という結果になっているのである。

 ではなぜ、賃貸ではなく持ち家を選択する人が多いのだろうか。

持ち家は、自分を顧客とした最も確実性の高い賃貸事業

 筆者も関与した一般社団法人不動産流通経営協会の「50平方メートル未満の住宅の居住満足度・住宅購入がライフスタイルに与える影響に関する調査」の結果を見ると、持ち家を購入した理由の1位は「家賃を払い続けるのはもったいないから」で54.5%(複数回答)を占めている。住宅を購入したい理由でも1位は同じ理由で22.6%(複数回答)を占めている。

 世の中の多くの人が持っているこの感覚は、正しい。なぜなら持ち家には、家賃に含まれている以下のコストがないからである。

  • 家賃には、家主の利益が含まれている(持ち家は自分のものだから利益は乗せない)
  • 家賃には、家賃滞納コストが含まれている(持ち家は自分で払うので他人の滞納リスクは負担しない)
  • 家賃には、空室コストが含まれている(持ち家は自分で住むので空室コストはない)
  • 家賃には、入居者が入れ替わるときに家主が負担する原状回復コストや入居者募集コストが含まれている(持ち家にはそうしたコストは発生しない。ただしリフォームコストは発生する場合がある)
  • 賃貸物件のためのローン金利は持ち家のローン金利よりも高く、その差額分は家賃に乗せられている。

 つまり簡単に言えば、持ち家とは自分自身を顧客にした極めて確実性の高い賃貸事業なのだ。大家が得る利益は自分のものになり、その分だけ賃貸よりも有利になるというシンプルな話である。

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