連載の第1回でも解説したように、空き家の絶対量はまだそこまで多くはない。しかし、使える空き家の借り手や買い手を見つけにくいことも事実だ。そして人口減少地域の古い戸建て空き家だけでなく、都市近郊の築古分譲マンションといった新しいタイプの空き家も増加しつつある。そうした低価格の空き家が流通しない背景には、50年間ほとんど変わっていない仲介手数料の問題がある。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 人口減少地域では空き家と移住者をマッチングさせようと自治体が主体となって「空き家バンク」の取り組みが増えている。国土交通省によると、全自治体の7割に当たる1261自治体が設置済みという(2019年10月のアンケート調査結果)。さらに2018年4月からは各自治体の情報を横断して検索できる「全国版空き家・空き地バンク」も国交省主導で始まり、参加自治体は2021年12月時点で867、登録物件数は約1万件という。

 本来であれば、こういった不動産の流通は市場に任せておけばよいはずだ。なぜ国や自治体が積極的に関与しなければならないのだろうか。

 それは、不動産業界にとって、こうした空き家に限らず低価格物件の仲介はうまみが少ないビジネスだからだ。例えば、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表している2020年10月から2021年12月までの首都圏の中古マンション取引状況を集計してみると、3000万円以上の物件では成約率が30%程度以上あるのに対して、1000万円以上3000万円未満の物件の成約率は18.1%、1000万円未満の物件の成約率は22.5%と低くなっている。

 また、東日本レインズの登録件数を見ても、1000万円未満の物件は全体の12.2%と比較的少ない。そもそも1000万円未満の物件の登録件数が少なく、かつ3000万円を境に成約率に大きな差があるのは、低価格の中古マンションに対するニーズが少ないことも影響していると思われるが、不動産取引の手数料体系の問題が小さくないと筆者は見ている。

次ページ 不動産業者は価格の高い物件を仲介したい