国交省の空家実態調査は調査年度によって調査内容がかなり異なるが、空き家率については09年の調査が詳しい。このときは住調の空き家率を基に「このくらいの空き家が発見され、このくらいの調査票が回収できるだろう」という予測を立てて実施された。ところが報告書には、以下のような問題が生じたと記載されている。

・現地調査開始後に空き家を発見できない調査区があるとの報告を調査員から受けた。出向いた調査区(調査対象)は887調査区であったが、325調査区で空き家を発見できなかった。

・予測では、発見が予定され外観調査が可能な空き家は約2700件、所有者調査である空家実態調査票の予定回収数は約1200件であった。しかし、実際には外観調査票の回収数(調査員が空き家と確認した数)は880件、所有者に対する空家実態調査は510件という結果に終わり、発見数は予想より著しく小さい値となった。

・外観上明らかに空き家と判断できる住宅が少なかった。二次的住宅(別荘など普段は人が居住していない家)などは外観から判断できなかった。集合住宅の空き家は外観からは確認できず、オートロックが多く中に入れなかった。

 つまり、あると思われた空き家が見つからず、その原因として住調の調査方法である外観からでは空き家かどうかが判断できないケースが多かったと明確に記載しているのである。その次の14年の空家実態調査には、「調査を実施した戸建て空き家等については、調査時点で人が住んでいると回答したものは31.3%、人が住んでいないと回答したものは65.0%となっている」という記述もある。住調で空き家と判断された対象の3割は、実際には人が住んでいたというわけだ。

 住調はそもそも空き家の把握を主目的としたものではないし、調査の継続性を重視しているため、時代に合わせて調査方法を変更することが難しい。そのことを理解したうえでデータを取り扱うべきだが、メディアなどでは空き家の数値だけが一人歩きしているのが現状だ。そして残念なことに、多くの自治体の空き家実態調査報告書では住調のような空き家率を明示しておらず、住調との差異についての言及もほとんどない。そのため、空き家問題が実はそれほど深刻ではないかもしれないということに気づきにくくなっている。

 東京23区の自治体調査では、空き家率が1%以下のところもある。引っ越しするときには、転出元と転入先の住宅を一時的に二重に使用することが一般的で、ある程度は空き家が必要だ。この点を考慮すると、空き家が問題どころか、住宅が足りていないという見方もできる。

 このように、社会問題になるほど家が余っているのか、実は逆に家が足りないのか、どちらが正しい現状認識なのかによって、必要な政策は大きく変わる。次回は、空き家率の正確な姿と、空き家が不動産価格に与える影響について考えてみたい。

 なお、今回紹介した内容の詳細については、筆者の論文「住宅・土地統計調査空き家率の検証(日本建築学会計画系論文集・2017)」を参照していただきたい。

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