検索サイトで「廃虚マンション」と検索してみると多くの記事がヒットする。検索結果の上位には、「大量の廃虚マンションが生まれる」「廃虚マンション時代がくる」といった刺激的なタイトルが並ぶ。内容を見てみると、そんなに遠くない将来に廃虚マンションが大量に発生し、大きな社会問題になる、と警鐘を鳴らしているものが多く、なかには、ほんの数年先に廃虚マンションが大量に出現すると断言しているものすらある。
 しかし、少なくとも私の知っている範囲で、いわゆる普通の分譲マンションが廃虚となった実例はない。今回は、廃虚マンションが本当に大量に生まれるのか、そしてどのようにしてマンションが廃虚になっていくのか、そのプロセスも考慮しながら考察してみたい。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 2020年7月、滋賀県野洲市にあった「廃虚マンション」が行政代執行によって解体された。平成30年度第1回野洲市空家等対策協議会の資料によると、このマンションは昭和47年(1972年)の建築。40㎡程度の部屋が9戸あるだけの小規模な建物で、管理組合はなかったという。近隣住民から2012年11月に「手すりがぶら下がっている。階段が崩落している」という苦情が入ったことをきっかけに対応が開始されたとされている。

 そこから解体までには約8年も要したことになるが、解体費用として3人の所有者からそれぞれ約1300万円の支払いがあっただけで、総費用約1億2000万円はいまだ回収されていないようである。

 この事例が不動産業界では大きなニュースになり、「今後、大量の廃虚マンションが生まれるのは間違いない」といった言説が広まるようになってきた。しかし、本当にそうだろうか。筆者は、前回の記事で指摘した「ECF(Extreme Case Formulation=極端な事例による構成)」ではないかと考えている。

 廃虚マンションが生まれる可能性を考えるために、まず、分譲マンションの現状の全体像を見てみたい。国土交通省の「平成30年度(2018年)マンション総合調査」では、以下のような結果が報告されている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2920文字 / 全文3824文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「データで解き明かす不動産の真実」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。