竹花氏:在宅で働いているので、家族が上司の厳しい指導ぶりに気づいたんですね。そしてあまりの行き過ぎぶりに怒ったと。これまで職場という閉鎖的な空間で完結していたので、本人もそれが当たり前だと思っていた行為が、在宅勤務によって外部の人間である家族の目にも触れるようになった。これもリモートの特殊性と言えます。

ブラック職場だということに本人が気づいていないケースもままあることを考えると、家族の目に触れることで、労働環境が改善する可能性があるというのもリモートワークの副産物かもしれませんね。

竹花氏:ブラック職場の本性が強引な社員の囲い込みにあるとすれば、リモートワークをきっかけにしてその囲い込みが崩れる方向に進んでいると思います。

ほかにリモハラの事例をご存じですか。

竹花氏:ハラスメント相談の第三者窓口を担当しているある企業では、不思議なものでリモートワークが始まってから相談件数がぐんと減りました。

どうしてでしょうか。

竹花氏:ハラスメント対策を講じてきた効果が表れているのかもしれませんが、それだけでは説明できません。明確な答えはまだ見つけられていませんが、対面で部下にガンガン指示する40代後半から50代の上司との接点が、リモートワークで減ったのが大きいのではないかと推測しています。

 ビデオチャットのようなツールに比較的慣れている30代であれば、リモートになってもガンガンやるのかもしれませんが、40代後半以上はリモートでは優位に立ちづらいのかもしれません。画面越しだと対面のときのように振る舞えないのではないかと思います。逆に言うと、こうした層が今後、Zoomなどのツールに習熟してくると、リモハラ事案がもっと出てくるのではないかと危惧しています。

常時監視も法的には可能

常時監視はどこまで可能ですか。

竹花氏:法的には常時監視は可能です。リモートワークでの労務管理に使うアプリでは、社員のパソコンにインストールすると、目の前にいるかどうか、つまりちゃんと自席に座っているかどうかをモニタリングできるものもあります。

 常にカメラで監視するというのはプライバシーとの関係で問題がありますが、勤務の様子を映すのではなくて、人が自席にいるかどうかを確認するぐらいであれば、許容されると考えられます。ただ、私の知る限りではそこまでやっている企業はほとんどありませんね。

改めて、リモハラ防止の心構えを教えてください。

竹花氏:やり取りがチャットやメール、Zoomなどのビデオ会議になるリモートワークでは、対面の会話と比較して、相手への伝わり方が厳しくなったり冷たくなったりする傾向があります。マネジャー層は、この点を理解することがまず重要です。

 また、リモートワークの場合、相手が自宅のような私的領域にいる可能性が高い。そこには介入しないという強い心構えもリモハラ防止には必要です。

 気心の知れた相手との間で話題にする場合には問題にはなりませんが、このあたりのさじ加減ができない人も多い。さじ加減ができないのなら、ビデオ会議の背景に何か映り込んでも、何か物音が聞こえても、一切私的なものには触れないという強い意志を持つべきでしょう。

 雑談が関係性を深めるという側面もあるので、私的な会話を一切しないというのはコミュニケーションを円滑に図る上で悩ましくはあります。しかし、リモートでのさじ加減が分からなくても、部下と仕事をしなければなりません。ならば、淡々とやることがマネジャーにとっての自衛策にもなるでしょう。

 ビデオ会議は、対面の会議に比べて録音録画がしやすいのが特徴です。自分が話している内容や様子が、誰の目から見ても、他者の人格を否定しないものであるか。自問自答する必要性が高まっていると感じています。

 うっかりリモハラ発言をして、それを録画されたうえ訴えられてはたまりませんよね。また、部下の立場から言えば、ZoomやTeamsに録画機能があるという点を上司に周知するだけでも、リモハラ防止に一定の効果があるでしょう。

■修正履歴
プライバシーに配慮し一部表現を改めました。[2021/2/2 18:15]