新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、短期間のうちに社会問題になりつつある「リモートハラスメント(リモハラ)」は、法律家の目にはどのように映るのだろうか。実際にどんな言動がリモハラに当たるのか、リモハラ防止に有効な手段は何なのか、在宅勤務の常時監視は可能なのか――。労働問題に詳しい竹花元・弁護士に話を聞いた。(聞き手は奥平力)

リモートハラスメントをどう防ぐ?(写真:PIXTA)
リモートハラスメントをどう防ぐ?(写真:PIXTA)

法律家の立場から、リモハラをどのように定義しますか。

竹花元・弁護士(以下、竹花氏):在宅勤務が一気に広がって、ビデオ会議ツールのZoomやチャットを使って仕事をすることが日常化する中で起きる、遠隔ならではのハラスメントだと定義しています。上司あるいは取引先による優越的な関係を背景にした、過度に私的な領域に踏み込んでくる言動や、通常の業務指導の範囲を超えた言動がリモハラだと言えるでしょう。

 より限定すれば、リモートワークで自宅のようなプライベートな空間にいるからこそ、新たに生じているハラスメントという意味では、前者を指すのだと私の頭の中では整理しています。

その限定的なリモハラの典型例とはどんなものでしょうか。

竹花氏:リモートワーク下で、上司が部下の背景に映り込む自室の様子について口を出すといった行為は、典型的なリモハラです。事件化しているケースはまだありませんが、よくあるケースです。

 もう一例挙げるとすれば、リモートでの飲み会の強要です。従来なら、懇親会はお店でやるもので、部下は帰りたいときには理由をつけて帰ることができた。2次会に行けば、上司が多めに支払いをしてくれたりもした。

 ところが、リモートではそうはいかない。リモートの飲み会は抜けづらいし、費用の面でも割り勘です。こうした点に配慮がないケースも、リモハラと言えるでしょう。

2006年早稲田大学法学部卒業、08年上智大学法科大学院修了。09年12月最高裁判所司法研修所(札幌配属)修了(62期)。16年より法律事務所アルシエンのパートナー。
2006年早稲田大学法学部卒業、08年上智大学法科大学院修了。09年12月最高裁判所司法研修所(札幌配属)修了(62期)。16年より法律事務所アルシエンのパートナー。

家族がリモハラ被害を告発

実際に担当しているリモハラの案件はありますか。

竹花氏:企業側の代理人として担当していた企業では、リモートワークが始まって以来、上司からビデオ会議のたびに厳しく指導されていると、部下の社員が会社に相談を寄せました。

 この上司は部下との物理的な距離が離れたことで、管理への不安から言動がますます悪化した。深夜に電話をして進捗を問い合わせることもあったそうです。リモートなので細かなニュアンスが伝わらず、対面のときに比べて、部下がより言動を冷たく感じたであろうことも、問題を深刻化させたと思います。

 そして、実はこのケースを訴えたのは、被害を受けている本人ではなく、家族なんです。

家族が、ですか。

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