外部との連携で大企業並みの競争力

 研究開発のみならず、ドイツの中小企業には様々な「外注先」がある。例えば海外展開のときも外部を頼ることができる。その中核を担うのがドイツ商工会議所。ドイツでは、商工会議所への加盟が法律で義務付けられている。だからこそ、商工会議所は加盟企業に対して強い責務を負う。加盟企業の海外進出も徹底的にサポートする。

 まず地域の商工会議所は、海外進出を希望する企業があれば、すぐに進出希望先の商工会議所につなげる。進出先の商工会議所は、市場調査に取り掛かり、可能性を探る。「その企業の製品と市場がマッチしない場合は正直にその情報を伝え、計画を再度練り直すよう勧めることもある」(在日ドイツ商工会議所のマークゥス・シュールマン専務理事)。成功率を高めるため、やみくもな企業誘致はしない。

 マッチすると判断すれば、現地でのビジネスパートナー探しから現地法人の設立までサポートする。一気通貫であらゆる支援をするのが商工会議所の役割だ。商工会議所のような国ぐるみの支援が輸出拡大を後押ししている。ドイツの中小企業で輸出をする企業の割合は19.2%と、2.8%の日本に比べて圧倒的に高い。

 こうしたフラウンホーファーや商工会議所など外部との連携により、ドイツの中小企業は「疑似的な大企業」(岩本氏)となることが可能だ。

 そのためドイツには、「隠れたチャンピオン」が多い。隠れたチャンピオンとは、「ほとんど名は知られていないが、世界市場で上位のシェアを誇る企業」のこと。ドイツの経営思想家ハーマン・サイモン氏の調査では、全世界の隠れたチャンピオンのうちドイツ企業の占める割合は47%に上るという。

 ドイツでは、アディダスなどのように有名企業が創業の地にとどまることが多い。企業活動の中で、「自然とネットワークができていくため、その場所から離れると競争力が落ちる可能性がある」(岩本氏)。

 ドイツも日本も、ものづくりの国として知られ、中小企業が全産業に占める割合も99%以上と高い。だが、「ネットワークとして大企業並みの競争力を有することができるドイツの中小企業に対して、日本の多くの中小企業は、1社のみで親会社からの注文をさばくことにいそしんでいる」(岩本氏)。

 こうした環境の整備は、政府や自治体の仕事でもある。中小企業の自助努力を求めるだけでなく、外部との積極的な連携を促す仕組みづくりも必要だ。

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