日本と同様、ものづくりの国として知られ、中小企業比率も99%以上と高いドイツ。そのドイツの中小企業は研究開発や海外進出において強みを持ち、世界市場で上位シェアを持つ「隠れたチャンピオン」を多く輩出している。なぜドイツで強い中小企業が生まれるのか。
日本では、京都試作ネットのような中小企業同士の連携が生まれているが、ドイツには「フラウンホーファー」モデルという独自の仕組みがある。フラウンホーファーとは、ドイツ全土に74ある半官半民の研究所で、新製品の開発に挑戦する中小企業の駆け込み寺となっている。

フラウンホーファーは1949年に設立され、戦後ドイツの発展の一翼を担ってきた。その役割は、「大学と産業界を橋渡しすること」(フラウンホーファー 日本代表部の林田一浩氏)。大学の近隣に立地し、大学教授が研究所長を兼ねるなど学術界との強いパイプを持つ。フラウンホーファーで働きながら論文を書く学生も多く、スタッフの2〜3割がそうした若手研究者だ。その研究力を生かし、主に民間企業から委託された研究・開発を手がけている。
日本で研究所というと、中小企業が気軽に相談に行けるようなところではない印象だ。だが、フラウンホーファーは「中小企業を非常に重視している」(林田氏)。企業からの依頼が増えるほど、政府からの資金援助も増える仕組みのため、中小企業を含む民間からの受注を積極的に受けようというインセンティブが働きやすい。研究開発を委託する顧客の6割が中小企業で、フラウンホーファーは中小企業にとっての研究開発部門の役割を果たしている。
そもそもドイツでは、日本に比べて学術界と民間企業との距離が近い。ドイツ経済に詳しい経済産業研究所の岩本晃一氏は、「ドイツでは学会と業界団体が一体化した組織が多く存在し、研究者と企業が交流する場がいたるところにある。実学重視で、民間企業での実績がないと大学の理工系の教員にもなれない」と指摘する。
フラウンホーファーを起点に人材交流も盛んだ。実は、フラウンホーファーのスタッフの約半数が5~7年の有期契約。論文を書きながら数年間フラウンホーファーで研究した学生は、卒業後民間企業に就職することも多い。反対に企業から数年間フラウンホーファーに移って研究することもある。そうした土壌があるからこそ、両者の橋渡しであるフラウンホーファーが機能しやすく、マーケットインでの研究が徹底されている。
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