日本経済の生産性の足を引っ張る中小企業は不要なのか──。

 経営者の高齢化や後継者不足にコロナ禍が重なり、中小企業を取り巻く環境が厳しさを増している。東京商工リサーチによると、2020年の企業倒産数は前年比7.2%減の7773件と2年ぶりに減少したものの、休廃業・解散数は前年比14.6%増の4万9698件と過去最多を更新した。うち黒字は6割。先を見通せずに事業継続を諦めるケースが増えているようだ。

 そんな苦境の中で高まっているのが「中小企業不要論」だ。政府の成長戦略会議で、首相のブレーンとされるデービッド・アトキンソン氏は、「日本経済の生産性が低いのは、中小企業の生産性の低迷が大きい。企業規模の拡大が必要」との主張を展開。彼自身は「(中小)企業の淘汰という形で(生産性向上が)実現できるものだとは思わない」とも述べたが、刺激的な主張は中小企業の存在意義を揺るがした。

 実はこうした「問題型」の認識と、地域経済や新産業創出の担い手としての役割があるという「貢献型」の認識のせめぎ合いは、戦後に中小企業政策が始まった頃から続いている古くて新しい問題だ。

 ただ、実態として既に淘汰は起きている。中小企業の数は、2016年で358万社と1999年(484万社)に比べて4分の3に減少した。「適者生存」が起きているのかもしれないが、この間に日本経済の生産性が向上したとも思えない。

 「失われた20年」で日本を支えてきた製造業の大企業は巨額の損失を計上し、金融機関は再編された。IT企業が勃興したものの、米中には水をあけられ、国際的な競争力が高まったとは言いがたい。本質は企業規模ではなく、時代に合わせて経営者が勝ち筋をいかに見いだすかということだろう。

 アフターコロナの中小企業はいかにして生き残りを図るべきなのか。中小企業の強みと弱みは何なのか。金融機関、M&A仲介業者、税理士など中小企業と支える周辺領域の課題は何なのか。このシリーズでこれらの問題を考えていく前提として、中小企業を巡る基本的な7つの質問と答えをまとめた。

  1. 中小企業とは?
  2. 中小企業の日本経済における存在感は?
  3. 中小企業の労働生産性は低いのか?
  4. 成長戦略会議での中小企業を巡る論争。デービッド・アトキンソン氏の主張と、日本商工会議所会頭・三村明夫氏の反論は?
  5. 河野太郎大臣が言う「中小企業のM&Aの両手仲介」は問題なのか?
  6. 戦後、揺れ動いてきた政府の中小企業観。「お荷物」か「貢献者」か?
  7. 海外の中小企業の存在感は?

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