年の瀬も押し詰まってきた。連載開始の1月以来1年間、読者の皆様にご愛読をいただき誠にありがたい限りだ。

 2021年を振り返りつつ、この連載ではどんな記事が読まれたのかを編集部に調べてもらった。

 今年書いた記事は全28本。自分なりに記事をジャンル分けして見ると、一番多いのが「トップインタビュー」の10本。次が「決算分析」の8本。続いて「脱炭素」の7本。「企業戦略」が2本。「その他」が1本となっていた。

 読まれた記事のベスト10に占める割合で言えば、うち4本が決算分析で、母数も多いとは言え、これはかなり圧倒的な数字だと感じた。具体的な数字は教えてもらっていないが、ページビューそのものも圧倒的らしくて、書いた本人もびっくりである。

 多分、2022年も編集担当からの圧はさらに強まるだろうし、筆者本人としても「あ、これは逃げられない」とある種悟ったので、5月の本決算時と11月の半期決算時には、覚悟して臨もうと思う。書くのが嫌なわけではないけれど、7社の発表が1週間くらいの間に集中するので、インプットもアウトプットも大変なのだ。さらに言えば、日経ビジネスだけでなく他の媒体もまたどうしてだか、決算分析原稿にご執心で、決算記事は書き分けが難しいだけにラッシュを掛けられるのがちょっとツラい(笑)。

 次はトップインタビュー。マツダの廣瀬一郎専務に10回にわたってお話を伺った。マツダの経営の深い基本理念のところから、かなり詳細かつ具体的な技術の話まで丁寧に答えていただいたので、10本全部を読めば今のマツダが何を考え何を進めているかが分かる構成になっている。よく読まれた回もあればそうでもない回もあり、編集担当はトータルでは大勝利とえびす顔なのだが、筆者としては全部読んでほしい、と実は思っている(笑)。公開から日が浅いためカウント的に不利だというのがあるにはあるが、廣瀬さんの面白い話に対して、筆者の実力が足りなかったか。もし、まだ読んでいない回がおありの方がいたら、お正月の時間のあるときにまとめて一気読みを是非、お願いしたい。

 そして脱炭素。菅元首相の施政表明演説(1月18日)を基点に、たった1年だが、実に長く感じた戦いだった。ここはある種ライフワークとして頑張っていく所存である。

いまだ消えない中国製EVへの“誤解”

 さて、それではトップ3について、ひとつずつ見直していこう。3位は「中国製EVをうかつに評価すると何が起こるか?」。

 一時期大きな話題となった42万円の中国製の電気自動車(バッテリーEV=BEV)、「宏光MINI EV」の背景を考察した記事である。

 現在、世界の自動車産業を巻き込んで大きなうねりとなっているカーボンニュートラル問題だが、ここ数カ月、揺り戻しが発生している。それはCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、日米独仏中が署名をせず、インドも一歩後退して削減目標に留まったところからも見て取れる。

 こうした一連の動きによって、国内世論も少し落ち着きを見せつつあるが、実はまだこの宏光MINI EVのビジネススキームについては、分からないところが多い。焦点になるのはもちろん価格だ。果たして42万円でクルマが作れるのかという話である。これには多層的な知識と理解が必要で、きちんと説明するのは意外に難しい。

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