編集Y:えっ。思った通り走らなかったんですか。

廣瀬:「みんながさんざん苦労して準備した試乗会そのものが、これで終わった」と絶望したんですよ。そうしたら虫谷(泰典・車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニア)が、「ちょっと待ってください」と言って、シートをカチャカチャ始めて、「ああ、やっぱり」と。「これでどうですか」と言うから、改めて乗ってみたら「おお、全然違うな」ってなりまして(笑)。

編集Y:虫谷さん、何をやったんですか。

廣瀬:実はシートレールの片側の爪が嵌まってなかったんですね。ちゃんと固定はされているんですけど、リジッド感がちょっと違う。でもそれだけで、お尻の感じ方が全然違うんですよ。

池田:すごいいい話。

編集Y:すごいいい話ですね。

廣瀬:いろいろな意味で箱入りエンジニアだったのが、こういうヒントをもらって人間中心の感性を開花……自分で開花と言ったら語弊がありますね(笑)、なんといいますか、何かを拡張する欲、みたいなものをそこで感じて。

 日本に帰ってきてから、今までのクルマ造りの中にはこういう要素って入ってないな。人間中心でやるなら、やっぱり大工の棟梁みたいに全体を引っ張るやつが必要だよな。じゃあ、棟梁はなにを目指すのか。例えば、五感のモダリティーを、どういうシステムに落としていったら、ああいう人間の感覚と合致した動きができるようになるのか、とかじゃないのか……みたいに考えていったんです。そのモデルのところは、たぶんラージこちらの発表のときにお話しできるんじゃないかと思いますよ。

池田:おーっ。

編集Y:おーっ。

池田:いや、素晴らしい。予告編まで付いて、これはすごい煽りですよ(笑)。

ヨーロッパに行くとなぜ一皮剥ける?

編集Y:あれ、虫谷さんも、そして藤原さんもヨーロッパのその部署へ行っていらっしゃいますよね。

廣瀬:そうですね。

編集Y:何かその、「変態開花装置」みたいなものがヨーロッパにはあるんですか?

廣瀬:うん、そうかもしれないですね。

編集Y:それは、いろいろな会社のクルマに次から次へと乗るということで?

廣瀬:たぶんそこはまずあると思います。もう毎日クルマに乗りますし、1日1000キロぐらい走るなんて普通にありますし。

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