廣瀬:はい。計画順序生産の「並び順」でラインにシャシーが流れてくるのと同様に、部品庫にも各工程で組み付ける「並び順」の部品の情報が送られて、そこで工程ごとの部品を、大きさにもよりますが数台から十数台分揃えて各工程に届けられます。加えて、例えばEVのバッテリーのような重量物は、脇からじゃなくてメインラインの中で対応する状態にして、装備の違いだとかEVにかかわらず付けなくていい部品だとか、いろいろ対応できるように工夫しました。

この防府第2工場の写真、どこが見どころかお分かりだろうか。そう、前輪後輪のパーツが別の無人搬送車(AGV)に載せられているのだ。電子制御で車体に組み付ける最適な位置に保持させ、ホイールベース(全後輪の車軸間の距離)の長い大きなクルマでも、短い小さなクルマでも、同一のラインで生産できる
この防府第2工場の写真、どこが見どころかお分かりだろうか。そう、前輪後輪のパーツが別の無人搬送車(AGV)に載せられているのだ。電子制御で車体に組み付ける最適な位置に保持させ、ホイールベース(全後輪の車軸間の距離)の長い大きなクルマでも、短い小さなクルマでも、同一のラインで生産できる
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池田:これはものすごく複雑だったんじゃないですか。実は他社の生産技術者の方と話すと、みんな「何でそんなことができるの?」と言っていますよ。トヨタも今度合弁で作ったアラバマ新工場とかで見てびっくりしているんじゃないですか。

廣瀬:アラバマ工場は、まずは国内工場と同レベルの計画順序生産を目指すところからですね。その後、よりフレキシビリティを高めることに取り組んでいきます。

池田:要するにシャシーと部品が縦糸横糸両方で流れているということですね。メインの流れで組み付けられるシャシーが流れているところに、横糸で部品が交差していくと。

廣瀬:そうですね。自分は現場を見て頭に入っているんですけど、なかなか適切なご説明ができない気がするので、是非一度ご覧になってください。

池田:是非よろしくお願いいたします。

車両が1台ずつフラットなパレットに載って動き、黄色の装置の箇所で左右のラインを移動できる。写真は左側のライン上のパレットが写真奥に移動していき、右側に移動して手前に戻ってくるところ。それで何をするのかと言えば、車種によって異なる作業が発生する場合、隣のラインに移して、また戻す、という作業が簡単に可能になる。もちろん必要な部品はAGVが最適な位置に運んでくる。
車両が1台ずつフラットなパレットに載って動き、黄色の装置の箇所で左右のラインを移動できる。写真は左側のライン上のパレットが写真奥に移動していき、右側に移動して手前に戻ってくるところ。それで何をするのかと言えば、車種によって異なる作業が発生する場合、隣のラインに移して、また戻す、という作業が簡単に可能になる。もちろん必要な部品はAGVが最適な位置に運んでくる。
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ラインごとの垣根がないので作業員が移動しやすく、両方のラインを担当することも可能になる。車体の移動はパレットに載せる“だけ”なので、車種が変わったり新型車が登場しても、新規投資が発生しない。パレットの間隔や移動速度を調整することで現場の状況に柔軟に対応できる。
ラインごとの垣根がないので作業員が移動しやすく、両方のラインを担当することも可能になる。車体の移動はパレットに載せる“だけ”なので、車種が変わったり新型車が登場しても、新規投資が発生しない。パレットの間隔や移動速度を調整することで現場の状況に柔軟に対応できる。
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ラージの設計大幅変更の背景は?

池田:さて次は、これはちょっと答えていただけるのかな、というお題です。アーキテクチャー関連のところで、ぜひお伺いしたいのはスモールの開発の途中でラージ(※)の計画が先送りに、というか見直しになったじゃないですか、あの見直しは、何に気付いたからなのか、どうしてやり直しになったのかというのを、もうちょっと具体的にご説明していただけないですか。藤原(清志副社長)さんがちらっと「冷却とかいろいろあった」とは教えてくれたんですが。

(※「ラージ」についてはインタビュー第2回を)

担当編集Y(以下、編集Y):普通は語られない技術開発の背景ですよね。とても興味深いです。

廣瀬:冷却もあるんですけど、もともとこのラージの中で、PHEV(エンジンで充電し、モーターで走行する、家庭用電源からの充電も可能な車両)の位置付けが、思ったよりも中心になるという想定を、当時はあまりしていなくてですね。台数的に言えばマイルドハイブリッド(エンジンで走り、モーターだけでは走行しない車両)を中心にして計画しておりました。

 しかし、この2年の間に、カーボンニュートラルへの要求の逼迫度というか、そういうものが、想像以上の速度で厳しさを増していきました。そういう世の中の流れの変化を見ていくと、PHEVはもう少し主役というか、中心に近いんじゃないかと考え直さざるを得なくなったんですね。

池田:なるほど、そこでレイアウトが。端的に言えば、床下にバッテリースペースを作ると、マイルドハイブリッドモデルにとっては室内レイアウトで不利になる。もし、主力がバッテリーが小さくて済むマイルドハイブリッドということならば、リアシート下にバッテリーを置きたいわけですよね。しかし、PHEVの方が主流だとすると話は違ってくる。

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