前回は、マツダの電動化における核心とも言える、ロータリー発電機を中心にした電動化マルチソリューションの話を詳細に伺った。マツダは「どんなインフラ環境に住む人も、富める人も、そうでない人もカーボンニュートラルに参加できるためのマルチソリューション」を実現して行くことがよりハッキリしたわけだが、問題は生産だ。多品種少量の作り分けができなければ、採算性が一気に悪化してしまう。果たしてマツダはそこにどんな手を打っているのだろうか?

 マツダは今年6月の中期経営計画(中計、中期技術・商品方針説明会)で「生産設備の汎用化の加速~投資の抑制/将来への準備」として、従来の多車種混流生産を「電動と内燃」までカバー範囲を広げるとしている。実はこのインタビューの後日、実際に見学することができた。他媒体だが工場取材記事を書いたので、本稿の最後にリンクを張っておく。

マツダ「中期技術・商品方針説明会資料」(2021年6月)より
マツダ「中期技術・商品方針説明会資料」(2021年6月)より
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混流は「どの比率でも効率がいい」のが狙った姿

池田直渡(以下、池田):さて、この電動・内燃混流生産は、マツダのこれまでの流れを見てきた延長にある分かりやすい話です。混流だったら、例えばEV(ここではバッテリーEV、BEV、いわゆる電気自動車)があまり売れなくても、ラインの稼働率に影響を与えないから、採算が合わせやすいですよね。でもやっぱり、混流生産のための設備投資はしているわけで、「投資が有効だったね」という話に持っていくには、BEVも売れてくれないと困る。

 まあロータリーのシリーズハイブリッド系はともかくとして、BEVに関してはバッテリーの価格低減を進めないと数は見込めないわけですよ。極端な話、意地悪な見方をする人に、「電動車が少量であっても造れることが混流のメリットだ」と言うと、そもそもの意味が結構後ろ向きのものに捉えられかねないじゃないですか。「売る気がないから、例外的少量を混流の中に押し込めるんだ」という話になって。

マツダ 専務執行役員 廣瀬一郎(以下、廣瀬):いやいや、需要変動があっても生産性を変えずにいけるところが電動・内燃混流生産の狙いです。例えばこれが5:5になったとしても、まったく生産効率を落とさずに造っていけるわけですから。

マツダ・廣瀬一郎専務執行役員
マツダ・廣瀬一郎専務執行役員

池田:なるほど。「少なくても効率よくできる」というだけじゃなくて、「多くなっても大丈夫」ということでもあると。

廣瀬:ボリュームにかかわらず効率がよい、というふうに捉えていただきたいのです。

池田:なるほどね。分かりました。そこはマツダのスタンスについてそういう説明をすればいいんだなというのが、今、分かりました。これもマルチソリューションを支える大事な部分ですね。

 あと、ちょっと詳細に入りますけど、混流生産って、ラインそのもの以上に、部品の用意が大変なんじゃないかという話がありますよね。乱暴に言えばラインそのものはシャシーを据え付けるジグのユニバーサル化問題だけだったりするわけじゃないですか。タクトタイムの調整とか、そういう専門的な話をひとまず避けて話をすれば。だけど、組み付け作業工程のスペースは限られているので、そこに全車種の部品なんて到底置いておけない。多車種混流生産に対応する部品をどうやって作業の手元に持ってくるんですかね。

廣瀬:この中計資料の中で言っているのは、計画順序生産といって、オーダーの順番に物を作っていきます。オーダー順に各工程で組み込んでいく部品を、その計画順序に応じて選択して部品台車で供給する脇のラインがあるんです。

池田:サブアセンブリーのような考え方ですかね。

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