前回は、マツダの技術がどのように積み上げられてきたか、そしてその技術のあり方に対する原理原則の話を伺ったが、今回はそういう技術の積み上げが可能になった裏側にどんな秘話があったのかを聞いていく。
池田直渡(以下、池田):「モノ造り革新」のところは、手戻りなく、技術を積み木の様に上へ積み上げて伸ばしていくということで、これは資料を見たら至極当然な感じです。普通に見る限り、誰が見てもとくに解説が必要な感じではないですけど、何かここについて秘話とかがあれば。
担当編集Y(以下、編集Y):おお、秘話ですか、秘話ですか。

マツダ 専務執行役員 廣瀬一郎(以下、廣瀬):ここで説明しているのは、マツダの「モノ造り革新」というのは、「生産」と「開発」の両者が連携して行ったブレークスルーだよ、という話なのですが、そこを支えているという意味では、実はデジタル革新が非常に大きな部分を占めています。「マツダデジタルイノベーション(MDI)」が始まったのは、第6世代よりずっと前ですね。1996年に金井(誠太・元会長)がそういう考え方を唱えています。
設計から生産までCADデータで全部繋いで、一気通貫でいくんだと、そういうスキームを過去につくっていたことが基本にあって、それが発展する形で、環境が整えられて現在のモデルベース開発(MBD)に繋がっているんです。マツダには潤沢な資金がない。だから投資をするところを選択して集中したわけですけど、いろいろな開発現場のバラバラな道具に投資をするんじゃなくて、ずっとスパコンに集中して投資をしてきましたと。
それがこういった形に結実してきた。だから発展性に関しては、根底の部分はデジタル化で担保されているということを申し上げたいですね、ここは。
編集Y:金井さんの本を出した後の後日談として、ご担当の方から聞かせていただいたんですけど(「『モノ造り革新』のリアル」、第1回はこちら)、「デジタル化に関してはサプライヤーの皆さんの巻き込みがうまく広がっていったのが大きい」という。
廣瀬:当たり前の話なんですが、モデルベースって我々の中だけでは完結しないんですよね。結局サプライチェーン全体の中で、成立しないとダメなので、サプライヤーさんを含めて、デジタルデータでやり取りできる環境をつくり上げましょうと。あんまり表に出ていませんけど、そうした活動を地道にやっています。
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