池田:で、そのタイプはステアリング(ハンドル)も異形というか、四角形の操縦かん型で、最大舵角、昔風に言うとロックto ロックが150度に設定されています。バイワイヤ化で持ち替えが要らないようにしないと異形ステアリングは使いにくいだけですから。

 それはつまり、ステアリングが、もはや舵角だけでクルマの旋回を決めるインターフェースじゃなくなるってことなんですよね。舵角と駆動力の兼ね合いをコンピュータが最適配分して、最大効率でクルマを曲げていくことになるでしょう。ハンドル操作は「ドライバーが今どのくらい曲がりたいかの意思を表示するツール」になる。つまり常時演算をかまして前輪の舵角と、駆動力をコントロールしながら曲がる、という形におそらくなっていくんですよ。まあ最初の1台からそこに特化してキレたセッティングをしてくるかどうかまでは分からないですが、ポテンシャルとしては今までのクルマと違うレベルの曲がる能力を持たせられる。最大旋回Gみたいな能力をものすごく上げられるじゃないですか。

廣瀬:ええ。

電子デバイスで運動性能を高めることをどう思いますか?

池田:さっき廣瀬さんは、「人間が重力を感じながら運動する」という言い方で、マツダの考える「人とクルマの根本的な関係」を示されましたが(第3回「マツダの廣瀬さんはどんなクルマを造りたいのか」参照)、こういうものが出てきたときにいったいどうします? 電子デバイスが運動性能の絶対値を高める面は間違いなくある。しかし、曲がるということにおいては性能は高いかもしれないけど、これが自然なものになるかどうかは、現物に乗ってみるまで分からない。さて、マツダはこういうものにどのように相対していきますか。

廣瀬:そうですね。こういうデバイスが普及して、ちゅうちょなく使えるコストになってきたら、それを使って、人間中心でクルマを動かす精度をさらに極めることはできるんだろうと思います。ただし、そこは「マツダらしさ」をしっかり組み込みたいとは思います。さっき池田さんもおっしゃったように(第3回参照)、人が乗れない戦闘機になっちゃいけないので。

池田:要するにハイテクデバイスをやるか、やらないかじゃなくて、それが人間中心にマッチする使い方ができるのであれば何であれ使うということですか。

廣瀬:使います。そうです。手段を特定するのではなくて目的に応じて使うと。

池田:なるほど。手段は手段ですからね。

廣瀬:手段は手段です。

池田:なるほど。よく分かりました。また話は変わって、ちょっと企業哲学的には些末ですが、事業面では大事な質問です。これから先、CAFE的な規制(Corporate Average Fuel Efficiency、個別の車種ではなく企業全体で見た平均燃費基準)を考えると、特に欧州ではストロングハイブリッドはどうしたって必要になるはずなんですが、マツダのリリースには、トヨタ製ハイブリッド車のOEM供給という話もちょっと出ているんですね。

廣瀬:はい。

池田:それについて、何か言えることはあるんでしょうか。

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