池田:読者からよく聞かれるんですが、ビルディングブロックのステップ1で、内燃機関の省燃費技術としてそれなりに脚光を浴びた減速エネルギー回生システムの「i-ELOOP」とキャパシター(コンデンサーの大容量のもの、静電気で電気を蓄える装置)は、その後、消えかかっているように見えるんですけど。この辺の見通しはどうなっているんでしょうか?
廣瀬:技術段階が変わったということになると思います。電動化が進んだ結果、i-ELOOPとキャパシターを使って回生をやるより、マイルドハイブリッド(※)に移行するほうが利得が大きい、そういう意思の表れだとお考えください。(※マイルドHV。電池とモーターのみでは走らないタイプのハイブリッド。走るタイプのハイブリッドは「ストロングハイブリッド」と呼ばれる)
池田:なるほど。キャパシターは、ここから先では生かしていけそうもないんですか、それとも何かまた新たなブレークスルーがありそうなんですか。
廣瀬:キャパシターはマルチソリューションという考え方の中で“適材適所”、市場に応じて使い分けはしていくつもりですけど、マイルドHVの低価格化と普及によって、そっちに収れんしていく方向だと今のところは考えています。
池田:ということは、キャパシターではなくバッテリーの方向にいくんですね。
廣瀬:そうです。
池田:なるほど。
廣瀬:キャパシターはやっぱり回生量(蓄電、放電できる電気の量)に限りがありますので。
池田:容量の問題ということですね。
廣瀬:はい。
電動化での差別化ポイント
池田:この辺でちょっとややこしい問題が入ってきます。電動化の競争領域の中で、マツダブランドの商品を差別化していくとしたら、結局モーター駆動技術で差を付けていくことになるのだろうと思います。で、本当は総合的な技術だということを承知の上で、マツダのモーター駆動技術とは何かと、ちょっと乱暴に1つに絞る言い方をしますと、今、中核になるのは「GVC(Gベクタリングコントロール)」のBEV向けの技術である「e-GVC」が中心になった制御ですよね(第3回参照、こちら)。
廣瀬:はい。
池田:私はe-GVCのあの仕上がりについてはとても素晴らしいと思っています。
廣瀬:ありがとうございます。
池田:とても自然だし、以前プロトタイプに乗せていただいた際の記事では「スーパーハンドリングEVだ」と書きましたし、その後製品化されたMX-30 EV MODEL(以下MX-30 EV)に乗ってもそういうものになっていたと。あれが「マツダのやりたいことだ」というのは納得がいったんです。
ただ、トヨタとスバルがやっているBEVには、車種の一部でどうも「アクティブ・ヨー・コントロール(内外輪の速度差を制御して駆動力でクルマをコーナリングさせる仕組み)」と「ステアリング・バイ・ワイヤ(ハンドルとタイヤの間が物理的シャフトやギアで繋がっておらず、電気的制御のみにて前輪を操舵する方法)」のハンドルが選べるらしいんですね。
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