過激なまでのカーボンニュートラルを求める嵐が吹き荒れているが、少しずつ論調に変化が見られる。欧州自動車工業会が現実路線を求める発言で口火を切り、海外メディアからも、グリーン政策を「緑の植民地主義」と厳しく批判する声が上がり始めた。潮目が変わりつつあることを強く感じる。
そういう中で、これまで「腰が引けている」と誤解されることも多かったマツダの主張は、「真っ正直なエンジニアリングによって、脱炭素に世界の全ての人々を取り残さない」という意味なのだ、と、徐々に人々の耳に入り始めるのではないかと思う。
では、その全員参加のカーボンニュートラルを目指して、マツダのエンジニアリングは具体的にどういうものになっていくのだろうか? 引き続き同社の中期経営計画(中計)をチェックしながら紐解いていきたい。

池田直渡(以下、池田):さあ、じゃあ次は、「ビルディングブロック」のところですね。マツダの電動化戦略の中心部で、たぶん今回の話のほぼまさにど真ん中だろうと思うんですけど、このビルディングブロックって、マツダにとって歴史的に同じ考え方できているような気がします。初代キャロルとかのときからでしたっけ?
担当編集Y(以下、編集Y):ええっ、キャロルのときからですか。
池田:小さいクルマからだんだん大きいものを造っていくような。
マツダ広報部 町田晃氏(以下、町田):あれは「ピラミッドビジョン(※)」ですね(※松田恒次社長時代に存在した、当時の主力車種だったオート三輪から、四輪トラック、軽自動車、乗用車へと技術・市場を積み上げていく計画のこと)。
池田:ピラミッドでしたっけ。積み上げ式の階層構造、というのは一緒で、ビルディングブロックの考え方とすごく似ているんですよね。
編集Y:へえ。
マツダ 専務執行役員 廣瀬一郎(以下、廣瀬):今進行中のプロジェクトは、2007年に「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」をしたときに、もう一度、体系化が始まりました。マツダはフレキシブル生産という考え方が遠い昔から根付いていて、それを使いながら今度は商品力を高める差別化と、生産力を高める共通化、ここをどうブレークスルーをするかというのが、当時のマツダの「モノ造り革新」の核心だったわけです。
池田:生産面で見れば、同じラインで複数車両を造り分けること。設計面で見れば、徹底的に磨いた基本設計を同一世代のモデル全てで共用して、複数の車種を造り分けていくという考え方。いわゆるコモンアーキテクチャー戦略ですよね。
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