前回のインタビュー(こちら)では、マツダの「人間中心のクルマ造り」とは要するに何のことなのかに迫ってみた。廣瀬さんのキャラクターがけっこうユニークなことも見えてきたのだが(笑)、今回は、現在グローバルに議論されている、サステイナブルな環境を維持するためのルール作りは果たしてどうなっているのか、日本はそれにどう応じていくべきなのかについて伺っていこうと思う。

マツダ・廣瀬一郎専務執行役員
マツダ・廣瀬一郎専務執行役員

池田直渡(以下、池田):さて、話は本題に戻って、今、グローバルで議論されている本格的なCO2削減アプローチのところですね。LCA(ライフサイクルアセスメント)への見通しとカーボンプライシング、それがどうなっていくと思いますかという質問なんですが、そうこうしているうちに、欧州委員会にちょっと先手を取られたなと。今年の7月に「内燃機関禁止」という、かなり急進的というか、極端なオピニオンを、まだ案の段階とはいえ、ドンとぶつけられたわけです。

マツダ 専務執行役員 廣瀬一郎氏(以下、廣瀬):はい。

池田:当然、それに併せて、LCAによるカーボン課税が本当に実現しそうだよという感じが、少なくとも流れとしては一気に現実化してきました。もちろん、それを強制する権利を欧州委員会が持っているわけではないですから、各国個別の法手続きを経て、最終的に実現するかどうかまでは、まだ分からないけれども、欧州委員会としてははっきり意思表示をしたと。

廣瀬:そうですね。

池田:たぶんここから先、話を詰めていく中で問題になるのは数値の公正さ。例えばLCAの中で本当のCO2排出量をどう算定するかというのは、やっぱりなかなか難しいじゃないですか。

廣瀬:そこは難しいでしょうね。

池田:当然そこには算出ルールの策定の主導権を巡って、制空権を誰が取るかという争いが発生します。誰もが自分の都合の良いルールにしたいと。

廣瀬:ヨーロッパの得意なやつですね(笑)。

池田:そう。悪いことに日本が最も下手なところでもあるんですけど(笑)。ここはもう、日本はやられる一方にしかならないですか?

廣瀬:いや、やっぱりこれは今LCA学会とかで原単位(一定量の生産物をつくるために使用、排出するモノや時間の量)の議論などをしていると思いますけど、こういうところに政府と協力して働き掛けていくしかないんだろうな、と。

池田:それは届きそうですか。

廣瀬:……。

担当編集Y(以下、編集Y):廣瀬さんが固まってしまいました(笑)。

池田:敵まで届きそうですか、それ。

廣瀬:絶句するな……。

池田:絶句する感じなんですね。

廣瀬:ここって、政府間交渉のようなところがやっぱりあるので。

池田:日本の政府はどっちの側に付いているか分からないですからね。

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