廣瀬:それでは、自分のヒューマニティーは上がっていかないだろうと。むしろ先ほど言った「エゴが拡大する」方向での、例えば「お前より速く走るぞ」みたいなマウンティングの世界になるのは、我々は望んでいないんです。
池田:戦闘機がいい例ですよね、もう人間が乗っているのが邪魔になってきちゃったんですよね、人体がG(重力加速度)に耐えられないから。機体が出せる旋回Gにはまだまだ余裕があるのに、人間がいるから出せない。人を乗せない方が性能が上げられるという話になっていって(笑)。
廣瀬:なるほど。いや、そうだと思いますね。
編集Y:池田さん、それ、雪風の話ですね(笑)。
池田:そこまでいっちゃったときには、もう人間の延長ではなくなるということですよね。
廣瀬:そうですね。
比翼の鳥のように
池田:マツダの理想は「人間と補完しあうクルマ」という話は、文学的に言えば、引き裂かれた人のもう一つのイデアなパーソナリティーみたいなものがクルマとしてそこにあって。そういう比翼の鳥(2羽で繋がって飛ぶ鳥)みたいな「人とクルマ」の形がマツダが造っていきたいクルマなんだと。そういうクルマを今後もずっと造っていきたいということを思っていらっしゃると。
廣瀬:そこはもう変わらず。以前はそれを「人馬一体」という言葉で表していましたけど、ヒューマニティーまで含めて、エゴを解消して健全な社会をつくるところまで、これを発展させていきたいなというふうに。
池田:「クルマに乗ると人が変わるよね」という言葉は、一般的にネガティブに言われるんだけど、マツダはそこをもっとポジティブに信じている、ということでしょうか。
廣瀬:そうなんですよ、そっちにしたいと。
池田:いいですね。
廣瀬:だから時速30キロの速度規制のところに来たら、30キロで走っても何か味わいがあって、ああ、ちゃんと俺の思った通りにアシが動いているな、とか、人の本質的な感受性を持って、正しくクルマが動いていることを観察しながらも30キロできちんと走れると。
池田:大事ですよね。
編集Y:ちょっとだけいいですか? おそらくこのまま記事に出ると、池田さんと廣瀬さんの「達人の会話」だと受け止められると思うので、ド素人からひとこと。
池田:どうぞ。
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