(前回から読む

 マツダは「カーボンニュートラル」の達成のベストな方法として、地域に応じたマルチソリューションを用意することを考えている、という。

 しかし、その活動をサステナブルなものにするためには、事業がうまくいくことが大前提である。今後の投資を楽にしていくためにもそこは極めて重要だ。「エネルギー価格急騰を背景に見るマツダの戦略」で見たように、マツダの事業戦略は細かな修正を繰り返してきた。現状は果たしてどうなっているのだろうか?

マツダ・廣瀬一郎専務執行役員
マツダ・廣瀬一郎専務執行役員

池田直渡(以下、池田):さあ、バッテリーを巡る世界大戦みたいな状況を背景に置いて、マツダの詳細なバッテリー戦略を問い詰めても、現時点では答えてもらえないことは理解しました。としたら、やっぱり戻るべきは中期経営計画(中計)です。多分、ここにマツダがどうするつもりか、言える範囲のことは書いてあるはずですね。その中計は6月に見直しされているんですけど、まずはこの見直しの理由を伺いましょう。

マツダ 専務執行役員 廣瀬一郎氏(以下、廣瀬):最初に中計を設定したときからみると、かなりの環境変化が生じていて、昔立てたシナリオのままではいけないじゃないかと。コロナ禍であったり、カーボンニュートラル政策の流れに大きな変化があったり、それを受けて達成年次も変わってきているので、そのままにはしておけない。ということで、諸々の環境変化を見込んで再設定をしました、と。

池田:変更が必要になった理由として、最もクリティカルだと思われたのはどこですか。

脱炭素+金融バブルで社会が大きく変化

廣瀬:最もクリティカル、ですか。やっぱりカーボンニュートラルですね。もう本当にここ数カ月単位で、社会の雰囲気が激変しているので。

池田:なるほど。ただですよ、これまで話してきた通り、世の一般論に任せておくと、最初の中計発表時から世間の一部の人は「カーボンニュートラルは待ったなしだ。全面的に電気自動車(バッテリーEV、以下BEV)化しなきゃだめなんだ。そんなことは分かっていたじゃないか」と。要するに、マツダは読みが甘かったんじゃないかと必ず言われると思うんですけど、そこはどう説明しますか。

廣瀬:時代は変化するので、いや、でも本当にコロナ禍に加えて、カーボンニュートラルのスキームが結構大きく変わりつつあるなというのが正直なところなんですね。

池田:前回話したように、その背後にあるのはグローバルなバブルですよね。

廣瀬:ええ。ベースに温暖化対策という重大課題があるのは確かなんですが、そこにグローバルな金余りバブルと、各国の覇権争いと、いろいろなものが全部重なっています。さっきの話(前回参照)で言うと、投資家ではない投機家たちはその中で、投資先を一次的に盛り上げておいて、上澄みだけかっさらうことを狙っている、というのは考慮しておかないと企業経営としてはリスクが高いです。事業計画に不可欠な資源が高騰して買えなくなります。そういう動きも折り込みながら、計画を立て直して、修正していかねばならないので。

池田:投資家と企業の間にギャップがあるのは、投資家が言う価値は基本的に時価総額経営の話じゃないですか、結局は「こうやると株価が上がる」みたいな話で、でも実業をやっている企業としては、株価が上がっただけでは大して意味がないんですよね。自社株を売却処分して利益確定するわけじゃない。信用や格付けにはもちろんいい効果が期待できますが、要は調達した資金を研究開発やマーケティング、顧客サービスにどうつなぐかが重要で。

廣瀬:そうですね。

池田:要するに、実業のところがちゃんとついていかないと意味がないんだけど、金融筋のカーボンニュートラルによる投資格付けとかを見ると株価一辺倒志向で、相いれない気がするんですよね。

続きを読む 2/5 「内燃機関+電動化技術」がやっぱり稼ぎ頭

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この記事はシリーズ「池田直渡の ファクト・シンク・ホープ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。