基本的に、次世代論争は全てポジショントークだ

池田:工場用地のデベロップメントそのものを考えても、どういう要件があるのかが分からないと、まず場所の選定ができないじゃないですか。バッテリーを作るんだ、と言ったところで、三元系リチウムイオンかリン酸鉄リチウムイオンかニッケル水素か全固体リチウムイオンか、どれが次世代の主役になるかを掌を指すように言える人はいないわけで。

 ざっくりと言えば、次世代論争の全てがポジショントークです。10年後に振り返ったとき、果たしてどのバッテリーを前提とした設備を作るべきだったとなるかは正直分からない。それを今ここで判断するのは博打要素が強いです。

廣瀬:そうですね。

池田:工場用地の環境アセスメントをやるにしても、そこからどんな排気や排水を出すのか、それが分からないとできない。ということは何を作るかが決まらないと身動きできない。でも一方でバッテリーの技術は目まぐるしく日進月歩するし、材料調達の難易度も猫の目のように変わってしまう。そういう複雑な次世代技術の覇権争いに工場のデベロップメントが左右される、と考えていくと、下手をすると工場の建設は10年がかりだと思うんですよ。でも、今の速度感では遅い、ということは明確にあるわけです。

廣瀬:おっしゃる通りで、仮に決め打ちで、生産設備が何とかなったとしても、原材料の調達先は波乱含みです。色々な地政学上の綱引きがありますし、正直言ってどうなるかが分かるとは言えないです。研究をして開発をする。生産設備をつくる。原材料を押さえる。そういうロングスパンのビジネスに、小回りの利く投機の人たちが入ってきたら、どうにもならないのです。

池田:例えば、「あいつらBEVを開発し始めたから、何年後にはバッテリーを大量に買うだろう。じゃないと工場が稼働できないから。だったらバッテリーの原材料を先に押さえとけば儲かる」みたいな、昔風の言葉で言えば「競取り(せどり)」、今風に言うと「転売ヤー」みたいな形でつり上げられたら、実業を回す人たちはたまらないですよね。

廣瀬:技術も資源も先行きが分からないんです。でも、分からなくても、やっぱり今ちょっと駒を張っておかないと取り残されていくのは確実なので。

池田:まあ、そうですね。だから、常識的には今いわれているように、各社の絵図の通りバッテリー価格の低減がうまくいくわけはないんだけど、先が読めないからといって、完全に手を離しちゃうわけにはいかない。しかし一歩間違えると、社運を懸けた電池種別が橋ごと落っこちますものね。

廣瀬:そうですね。どうやれば勝てるという話はまったくないんですけど、今、乗っかっておかないと、もう手遅れになるという、私は世界中の自動車メーカーが見ているのは、どっちかというと、そっちのスタンスだと思いますけどね。

池田:どこで聞いたというのは言えませんけど、やっぱり中にはこの厳しい状況でも堅牢なプランを持っているところがあって、何をやっているかといったら、もう鉱山開発そのものに乗り出すと。

担当編集Y(以下、編集Y):ええっ(笑)。

廣瀬:そうでしょうね。

池田:内緒って言われた割には、間に入った商社のウェブサイトにはもうしっかり事業説明がされていて、それが豊田通商だと言えば、もうどこか分かったようなもんですけど(笑)、2008年くらいから取り組んで、すでにリチウムの埋蔵量の10%を確保済みです。

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