内田新体制での再建は、まず日産ブランドを建て直し、得意な市場である北米と日本で売るところにあり、V字回復を目指そうとすれば、それに加えて中国でも販売を伸ばさなくてはならない。カーボンニュートラル規制の厳しいエリアで戦うことになるのだが、日産はそもそも電動化に強い。電気自動車(BEV)でもパイオニアなら、そのコンポーネンツを使ったハイブリッド(HEV)のe-POWERシリーズも強力だ。従って、それらの電動モデルを次々と市場導入して、商品の鮮度を一気に引き上げることが最初に打つべき手、となる。
そういう極めてまっとうな作戦を内田社長は実行し、ここまで成功させてきた。それが今回の上半期決算で見えてきた。もちろんこれで安心というにはほど遠い。過去、痛めつけられ続けてきた日産の企業体質を改善するには、まだしばらくは勝ち続けなくてはいけない。にしても、それもこれも、ここで転んでしまえばおしまいだった。高く評価すべきだろう。
お次の「モノづくりパフォーマンス」は他社の原価改善における「加工」の部分である。これが「原材料」のマイナス398億円を上回る455億円であることに注目したい。つまり日産は原価改善に成功しているということである。鮮度の高い良いクルマを安く造ることに成功している。これで部品不足が一段落すれば「原材料」が下がるので、一気に利益を増やせることになる。
というあたりを示したのがこちらの「グローバルパフォーマンスの進捗」という図で、台当たり売上高が11%増えているのと同時に、「モノづくりパフォーマンス」の成果によって損益分岐販売台数を15%改善している。特にこの部分は日産の先行きにとって極めて有意な結果だと言える。
では、先行きの見通しはどうなっているか?
「販売台数」は対前年実績比マイナス25万2000台の380万台。この数字を見ると、日産の規模感から言ってかなり物足りない。最低500万台のラインに早急に持ち直したいところだが、まだまだコマが足りていない。引き続き強力な新型車を投入することで、増えていくことに期待したい。
「売上高」は8兆8000億円で対前年実績でプラス9374億円。前の四半期の見通しから下方修正ではあるが、もともとの目標が高かった上に、サプライチェーンの毀損のある中でこれは文句なしだろう。営業利益は対前年実績比でプラス3307億円の1800億円。ここはちょっと厳しい。先に見たとおり原価を引き下げ、売れる新型車を投入していながら、営業利益率を見ると2.0%と振るわない。いかに日産が傷んでいたかが分かるというものだ。当期純利益は対前年実績比で6287億円増の1800億円。まあ営業利益が振るわない以上、ここだけパフォーマンスを上げるのは難しい。
資料にはない数字だが、「研究開発費」がどうなっているかは気になるところで、別の資料から拾い出してみると、対前年実績比で129億円増やして2384億円となっている。売り上げ規模からすると少しさみしいが、それでもこの厳しい反攻作戦の中できちんと増やしていることは評価したい。
Powered by リゾーム?