次に注目したいのは数字的には地味な「コストダウン効果等」である。ここがプラスの130億円になっているのは大健闘と言える。何度か書いてきた通り、上半期の最大の問題は部品不足であり、当然仕入れ単価は上がる。これは避けられない。「嫌なら他から買え」と言われても選択肢がないからだ。という中で、プラスに持っていったのはやはり「自社加工」での工夫によるコストダウンがうまく機能したということであり、それはこれからのホンダの競争力に大きく寄与するだろう。
他に注目すべきなのは「研究開発費」のマイナス260億円。これはつまり研究開発費を増やしているということで、まさに明日への投資である。長らく燻っていたように見えたホンダに変化の兆しを感じた上半期決算だったと思う。
日産、まっとうな再建策が順調に進む
日産自動車(以下日産)の決算資料は、とても編集に手間暇がかかっている。決算のたびに、同じフォーマットではなく、むしろその時に言いたいことをアピールする資料になっていて、そういう意味では財務資料というよりプレゼンに近い。
例えば、今回のグローバル販売台数ダウンを数字で挙げるに際し、わざわざ自社の販売動向にグローバル市場動向のグラフを並べて、全需のマイナス12%と比べれば自社のマイナス10%が健闘しているということをアピールしたいグラフになっている。しかも目盛りが粗くなっていて、実数は見せない。ついでに、若干の苦笑いを添えて言えば、下げ矢印の傾きも2%の差に見えない。まあそれだけ必死なのだと思うが、どちらにしても続くページでは実数がバッチリ載っているので、そんなに頑張って演出しなくてもいいのではないかと思う。
老婆心ながら、そういう演出過多はかつてのカルロス・ゴーン社長後期から西川廣人社長までの日産的なものなので、せっかく内田誠社長体制になって合理的な経営を始めた以上、変えた方がいいと思う。普通に読めば分かることなのだし。
ということで、増収増益の立派な決算である。利益率はまだ心もとないが、それでも前年同期の営業利益がマイナス1588億円と、目も当てられない状況だったところからよく踏ん張ったのは誰が見ても明らかだ。
営業利益の対前年同期を見てみよう。
左から「為替」がプラス。「原材料」がマイナス。これは部品不足にともなう価格高騰が原因だ。次は「販売パフォーマンス」で、ここはガッチリとプラス。というかここがダメなら内田改革は大失敗になっていたところなので、極めて重要なポイントである。
日産は、長らくグローバルで新型車投入を止めて、古いクルマを売っていた。当然競争力がないので販売台数はジリ貧だし、鮮度の悪いクルマを売るには多額の販売奨励金も必要だ。そこまでしてつくった資金で、ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に低価格車をたくさん売ろうと考えたのだが、完全に失敗に終わって撤収した。
筆者の推論にすぎないが、この計画、おそらくは親会社ルノーの都合で、日産ブランドをルノーの格下に置いておきたい思惑が底流にあったのではないか。そのあたりの真実が今後、果たして明かされるのかどうかは分からない。
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