トヨタの“呆れた決算数値”の背景

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 トヨタは毎回呆れるような数字をたたき出してくるが今回も同じ。増収増益のみならず、何度も工場の操業停止が起きたこのアゲンストの環境下で、前半期としては過去最高益を記録した(ただし、昨年決算方式を米国会計基準から国際財務報告基準=IFRSに切り替えているため、直接比較はあくまでも参考)。

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 連結営業利益増減要因の項目を個別に見ていくと、「原価改善」以外の全ての項目がプラスである。という記述を見て、疑問に思う人はトヨタ通だろう。トヨタは、どんな逆境でも「原価改善」でそれらを跳ね返して利益を計上してくる会社である。そこがマイナスなのは自動車業界に鳴り響くアラートである。

 トヨタをして「原価改善」の項目をマイナス300億円にしてきたことが今回の決算の非常に特徴的な部分である。当然他社はトヨタ以上にそこは厳しくなるはず。ということで、トヨタにこのマイナス300億円の事情について質問してみた。その回答から見えてきた背景は次の通り。

 まず、部品調達の困難に際して、原材料の仕入れ価格が上がっている。これが下げ要因でマイナス1800億円。

 しかしそれで終わらないのがトヨタである。原価改善には大ざっぱに言って「原材料仕入れ」と「加工」があるのだが、売り手市場でどうにもならない仕入れで負けた分の大半を、「加工」で1500億円押し戻している。つまり、自社工場で組み立てをする部分の効率化でそれだけのプラスを生み出してきたわけだ。その結果この項目がマイナス300億円で済んでいるわけで、これは見えないファインプレーである。おそらくトヨタ以外のメーカーはこの押し戻しがもっと小さいので、原価改善でかなり厳しいマイナスを出すことが想像される。

 ついでに言えば、トヨタは毎年、通期決算での原価改善の内部目標を3000億円に置いている。これは毎年毎年原価を3000億円減らしていくというとてつもないチャレンジであり、それを実現できるのはやはり「加工」の寄与する部分が大きい。「仕入れをたたいて利益を出している」と揶揄されるトヨタだが、ねじ1本がいまさら半額になるはずもなく、すでに乾いた雑巾状態にある。だからといって仕入れ原価の低減に手を抜くトヨタではないが、それは原価低減の主力ではない。「加工」をコストダウンしていく力こそトヨタの底力の源泉であり、そのノウハウをサプライヤーに提供することで、サプライヤーの「加工」コストの低減を達成し、仕入れ原価を低減していくという図式だ。

 他の項目を見ていくと「営業面の努力」が大きいが、これは全体俯瞰の部分で述べた通り、販売奨励金の抑制が大きい。また今回は為替の差益もプラスに出ている。

 「何でトヨタは毎回負けないのだろう?」ということを毎度考えるのだが、今回少し分かった気がする。どこの会社にも勝ちパターンというものがある。そしてそのパターンに持ち込めば勝ち、持ち込めないと負ける。ところがトヨタはどんな場面でも日替わりのスターが出てきて、利益を稼ぎ出す。今回で言えばスターは「営業面の努力」なのだが、実は、そこが光り輝くのは、陽が当たらないところでの奮戦があってのことだ。

 先に述べたように、今回マイナスになっているとはいえ、原価改善を限りなく引き分けに近いところへ持ち込んだことで、営業面の稼ぎ出す利益を最大化しているわけだ。要するにその時その時で光の当たっているスター以外にも、層の厚いスターが各ジャンルの守りを固めており、場面が違えば彼らがスポットライトを浴びることになる。それこそがトヨタの強みである。

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