この他に決算に影響した特殊事情があるとすれば、日本生産の輸出分については円安が功を奏し、為替差益の積み増しがある。もっともこれは企業の努力によるものではなく、あくまでも時の運でしかない。

 という全体背景を頭に入れたところで各社決算を発表順に見ていこう。ちなみに今回は前半戦。明日、発表タイミングの遅い後半各社の話を後編としてお届けする予定である。

前半(今回掲載)
・三菱自動車工業(11月4日発表)
・トヨタ自動車(11月4日発表)
・SUBARU(11月5日発表)

後半(明日掲載)
・本田技研工業(11月5日発表)
・日産自動車(11月9日発表)
・マツダ(11月10日発表)
・スズキ(11月11日発表)
(ダイハツ工業はトヨタ自動車による100%子会社化以来、決算発表は行っていない)

 例によって会社ごとに「売上高」「営業収益」など項目の呼び方が細かく違うが、これは表記揺れではなく、決算方式の違いによる用語の違いである。筆者は発表元の言葉をそのまま使うので、ご了承いただきたい。画像は各社の決算資料から引用している。

瀕死の状態から抜け出た三菱自動車

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 決算結果としては増収増益。かつ全ての指標がプラスになっており、めでたい限りだが、三菱自動車工業(以下三菱自動車)の場合は昨年同期があまりにも酷かったため、むしろ全体評価としては、集中治療室で瀕死の危機を乗り越え、小康状態に入った、と判断すべきだろう。本格的な治療が始まるのはこれからだ。

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 地域別販売台数の推移を見ると、今回落ちているのは欧州と中国。中国は昨年の落ち込みが少なかったことで、ことさら今年が厳しく見える構造だが、欧州で減らしていることに関しては少々疑問である。三菱自動車にとっては、比率的にも、アセアン(ASEAN、東南アジア諸国連合)、北米に続いて3番目に大きいマーケットなので、本来取りこぼしたくないマーケット。台数ダウンの原因を知りたいところだが、地域分析ではアセアン、オーストラリア・ニュージーランド、北米、日本の内訳しか書かれていない。各社の決算書を見ていると、毎年統一したフォーマットで光も影もきちんと表記する会社と、毎年フォーマットを変えて、都合のいい情報にフォーカスする会社があるが、どうも三菱自動車と日産自動車はその辺りをよく弄る印象がある。

 という半期を踏まえての通年見通しを三菱自動車自身がどう見ているかと言えば、以下の通りである。

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 全体として回復基調にあるのは間違いないし、昨年を基準にすれば奇跡的な回復ではあるが、本質的には昨年を基準にしていてはダメだ。目指すべきはもっと上にある。それでも光るのは営業利益率の3.0%で、順調な経営をしている会社であればまだ物足りないが、集中治療室で救命過程にある会社と見れば、標準値の下限に到達したことは大きな希望である。ということで三菱自動車については「おめでとう」だが、同時に「本番はこれから」という見解である。

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