テスラの狙いは、今は多数の鉄板を溶接することで成立しているシャシーの機能を、部品点数を究極まで減らして単純化し、安価に成立させることだ。同じ生産面での革新でも、テスラは基本的には現状機能を維持してコストダウンを図り、トヨタは、これまでコスト要因で不可能だった手間の掛かる作業を実装しようという考え方だ。

 余談になるがテスラのこの3ピース方式は、確かに画期的アイデアであるが、疑問もある。特殊アルミと特殊鋳造と言われると、そこにものすごい技術進歩があるのかもしれないが、一般論として鋳造金属は脆性面で不利であり、同じ強度を持たせるためには肉厚を大きく取らなくてはならない。それで本当に軽量になるのかという問いは、鋳造という技術のあり方を知っていれば普通に湧く疑問だと思う。「いやそこは特殊アルミなので、大丈夫なのだ」と言われれば、詳細を開示してくれと言いたいが、きっと企業秘密だということになるだろう。

 また鋳造でそれだけの大型パーツを作ると、普通は精度が出ない。アルミ鋳造は熱収縮による歪で寸法の狂いがかなり大きく発生する手法なので、精度を出すためには鋳造後にあらゆる接合面に対して切削加工が必要だ。フロアほどの大型アルミ部品をNC旋盤で切削加工するのはだいぶ手間が掛かる。大型鋳造部品を搬送し、固定し、基準位置を決めるのは結構大変だし、それだけの大物を扱えるNC旋盤はコスト的にもかなり負担になるだろう。

 筆者の想像では、自動化された鉄板の溶接とどちらがコストで有利かというと結構怪しい。これも「特殊鋳造だから大丈夫なのだ」と言われれば、ああ特殊なのね、と言うしかないだろう。

なんでまたこんなに手間をかけるのか

 さて、閑話休題。トヨタは一体なんでこんなに手間を掛け、面倒なことをやり続けるかだ。

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