2月に医者に怒られ、食生活改善と運動にいそしんできた。
 何をやっていたかというと、食事量を減らすと同時に内容も低糖質食へとシフトする。併せて週に2回以上の1~2時間の有酸素運動である。

 具体的な方法としては、最近YouTubeで少々カンに障る広告をしつこく繰り返す(まあ検索がCookieに残っているせいなのだが)、完全栄養食品「Huel」のローカーボ仕様、ブラックエディションの置き換えを主に、自炊や、吟味した総菜の外部調達などを組み合わせて、量と質をコントロールした。

有酸素運動にE-BIKEを導入

 長らく苦手としてきて、継続的に続けられたためしのない有酸素運動に関しては、E-BIKEを買って乗り始めた。これが楽しい。E-BIKEとは要するにスポーツ系の電動アシスト自転車である。心房細動を一度やっているので、極端な高強度運動を避けたいのだ。

 E-BIKEはアシスト力の基準が行政指導で定められている。「ペダルを漕ぐ力の2倍以上のアシストはしない。時速24キロでアシストを打ち切り、アシスト量ゼロに向けてなだらかに漸減させていく」。なので、漕がないとアシストは得られないし、速度とともに変速比を落とす「心臓破りの坂」では強力にアシストする半面、平地の巡航のように負荷に比例して速度が高まる場面ではアシスト力が減るか、速度によっては無くなる。つまりアシストが運動強度を平均化してくれるのである。

 さて、プランを実行する上で難しかったのは何かといえば、ローカーボ食の調達だ。最初のうちは頑張って自炊で賄ってきたのだが、そういつも料理に時間は掛けられない。かと言って外食だと量と質の目標が崩れる。中食の類い、例えばスーパーのお総菜は手間なく量と質を吟味して買えるところがいいが、炭水化物抜きだとどうしても高コストにつく。つまり目的を維持しつつ、手段の継続性が高い方法をどうやって見つけ出すかが課題だった。

 そういう時、Huelみたいなプロテイン系は、量と質の内容は文句なし、もともと期待値は高くないので味もまあ良し。調理も冷水でシェイクするだけなので楽で、コストも1食あたり300円以下と、食事として絶望的に味気ないことを除けば、あとはパーフェクトである。普段の食事だって多分に「ああもう面倒臭いから牛丼でいいや」みたいな諦めで成り立っているので、五十歩百歩だと自分を説得する。

 ということで1日3食のうち2食をこれに切り替え、あと1食は自由というルールを自分で策定した。しばらくは快調だったのだが、やがて体重が落ちなくなった。1カ月ほど一進一退のプラトーに嵌まった。

 で、一念発起して、「完全栄養食だったら、それだけでも生きていけるだろう」とばかりに6月の1カ月間は1日3食を全部Huelに切り替える決心をした。と言うと少し言い過ぎで、たまに自炊の豆腐料理や、高タンパク系のスーパーの総菜や、はたまた糖質60%オフのシリアルなんかも併用した。シリアルっていうかほぼ大豆とふすまなので、なんともガリゴリな食感だけれど。

 白状しておくと、1カ月分の単純計算90食のうち、3食は普通の飯を、1食はヤバい飯を食った。複数で取材移動中の駅弁(これは不可避)と、朝の運動でチャリに往復40キロばかり乗った先で食ったマックのエッグマックマフィン1個(これは日和った)と、打ち合わせで食ったピザ(これは不可避)。そして取材帰りに同業者と行ってしまった今回の大物(完全に日和った)である。

 とりあえずチャレンジの結果のほうを先に書くと、一進一退のプラトーを無事抜け出して3キロほど落ちた。努力の割に成果は普通とも言えるけれど、ペースとしては無理のない、いいところ。ついでに言えばピーク値からは約14キロ落とした。

西麻布のヤバい定食屋さん

 で、今回の飯の話はそのヤバいランチ。ストイックな日々の反動で大暴れしてしまった1食である。そう、筆者が現在「世界最高のランチ」に勝手に認定している。西麻布三河屋(東京都港区西麻布1-13-15)の「ミックス定食(1100円)」である。

 極めて庶民的な店だが別の意味でハードルが高い。まず営業は昼だけ。11:30開店で、14:30閉店。とはいうものの、大抵はライス切れで早期閉店。13:30を過ぎるともう危ない。行列店なのだが、最後の1人になって、後ろの人は断られたことが何度かある。

 「ほーうそれは厳しい」と思ったらまだ甘い。土日祝はお休み。そして水曜日も定休日。要するに月火木金の昼にしか食えない。ちなみにコロナ対策もあって7月、8月は夏期休業で9月2日からの開店で、という具合にちょっとした幻の飯である。昔は平日昼はずっとやっていたのだけれど、店主夫妻がお年を召して、キツくなったのだろう。水曜休みになった。もっと前は土日や夜もやっていたらしい。

 さて、このミックスフライ、本来はピンポンボール大のポテトコロッケ(写真では見えない)と棒状のメンチ(手前)だけが正規の盛り付けなのだけれど、おまけとして漏れなくチキンカツとハムカツがのっている。昔はお母さんが「おまけ付けといたわよ」と言ってくれたのだけれど、当たり前になり過ぎて最近はおまけの説明はない。「キャベツとご飯とお味噌汁はお代わりできますから」は今でも言ってくれる。

 で、肝心の味のほうは、もはや暴力的にうまい。これ食って死ぬならもうそれでいい。ハムカツだってチキンカツだってうまいけれど、やはり正規軍のコロッケとメンチは別格である。一緒に行った同業者は絶句して固まっていた。

 いやつくづく自宅の近くじゃなくて、あと営業時間が厳しくてよかった。気軽に行けたら、筆者は多分何年も前に三河屋のミックスフライに殉死していたと思う。

 というところで今回の本題は、6月7日にトヨタが発表したGRヤリス“モリゾウセレクション”の深謀遠慮についての深掘りである。

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