補助金は追い風でもあり、麻薬でもある

 現在、日本ではEVに国や地方自治体から多額の補助金が付くため、話題が盛り上がっている。特に地域によって補助金の助成額は違うので一概には言えないが、高いほうのグレード「P」を買う場合、国の補助金が最大55万円、軽自動車重量税の減税額が9900円、軽自動車税の減税額が8100円。東京都の場合は、さらに都の補助金が60万円加わって最大116万8000円となっており、つまりは約300万円のクルマの3分の1以上に相当する補助金が付くことになる。

 加えて小池百合子都知事は、6月3日の会見で、さらなる補助金の増額を示唆しており、会見の中では、車両に対する補助金の増額(最大で30万円積み増し)や、EVを家庭用の電源として使えるようにする「V2H」機器の設置費用の補助(最大で約100万円)を追加するなど、具体的な詳細条件は不明ながら、記録的な大規模補助が追加される可能性が高まった。

 現在日本では新車販売の40%は軽自動車。ここにこなれた価格のEVが投入されれば、なかなか普及が進まないEVの起爆剤になる、と期待されているわけだ。

 だがしかし、現実には車両価格そのものも多少下がったものの、マーケットの相場観との差を埋めたのは補助金である。補助金は麻薬だ。依存してしまうと脱出するのは地獄の苦しみ。堅牢(けんろう)な出口戦略もなく、巨額の補助金を組むのは、産業に対するテロ行為である。打ち切られたときに、メーカーが「補助金頼みになって、開発競争力を喪失しました」ではどうにもならない。かつて日本の家電産業にとどめを刺したのは「家電エコポイント」であると筆者は考えており、今回の補助金にも「バラマキで、かえって企業を苦境に陥れる」という意味で同じニオイを感じる。この件はいずれ別の機会にしっかり書きたい。

 話を戻して、長期的にはいざ知らず、直近の1年に関してはeKクロスEVは三菱自の今期の業績に強い追い風になるであろうことは想像に難くない(6月12日現在で受注台数3400台、月間販売目標台数の約4倍)。「ミニキャブ・ミーブ」の一般向け再発売も、補助金がらみで色々と可能性があるかもしれない。

 資料に「新型エアトレック」と書かれているクルマは、三菱自と中国企業の合弁会社である広汽三菱汽車が2021年末に発表した中国市場向けEVのSUVモデル。ある程度の需要は見込めそうだが、中国市場の先行きが気になる。こればかりは何とも言えない。ただし、他社の決算分析記事でも書いた通り、中国の合弁会社は赤字も黒字も持ち分法適用の範囲に限られ、おおむね半分しか反映されない。リスクもメリットも半減されるという意味では、荒れた局面では多少の安心材料になるだろう。

 PHEVの2台はもちろん日本国内でも売るだろうが、基本北米向けである。米国事業に関してはこれらが売れるかどうか、そして、バッテリー価格高騰の中で、まともな利益率を維持できるかどうかがキーになってくる。

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 具体的な商品が分かったところで、もう一度「2022年度 販売台数見通し【前年度比】」を見てみよう。「中南米、中東・アフリカ他」は小さなマーケットの合算で、実質的には「その他」なので除外すると、結局、マーケットの大きさと伸び率から見て三菱自にとって重要なのは、アセアンと北米ということになる。これを先ほどの各地域に投入する新型車両計画と付き合わせると未来がある程度見えるはずだ。そして、日本はどうするのか? 

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