厳しい現状、強気の見通し

 さて売り上げはどうか? 前期「売上収益」2兆8302億円に対して、当期は857億円ダウンの2兆7445億円(97%)。ここはまあ微減と言っておこう。下落幅は大したことがない。少なくとも台数の落ち込みのギョッとする数字から想像するよりははるかに良い。だがしかし、ここも今期見込みを見ると3兆5000億円と超強気。前期、当期、今期の並びの遠近感で目がチカチカする。

 「営業利益」は前期の1025億円から120億円下げて905億円(88.3%)。営業利益が前期比でマイナスを付けたのは他にスズキだけで、そのスズキも98.5%にすぎない。

 スバルの営業利益率を算出してみると、3.3%となり、下には日産の2.9%がいるものの、マツダと同率ブービーである。ちなみにすぐ上は三菱自の4.3%。トップはご多分に漏れずトヨタの9.5%である。日産もマツダも底を打っての上げ基調での数字であり、対するスバルは急落中の数字。単年で止められれば良いのだが、数字的には危険水域に近づいている。

2021年度自動車各社決算比較表
(単位:千台、億円、比率は小数点以下第2位を四捨五入、前年同期が赤字だった場合は-とした)
連結販売台数 前年同期比 売上高 前年同期比 営業利益 前年同期比 営業利益率 当期利益 前年同期比
トヨタ 8,230 107.6% 313,795 115.3% 29,956 136.3% 9.5% 28,501 126.9%
ホンダ 4,074 89.6% 145,526 110.5% 8,712 132.0% 6.0% 7,070 107.5%
日産 3,876 95.7% 84,246 107.1% 2,473 2.9% 2,155
スズキ 2,707 105.3% 35,684 112.3% 1,915 98.5% 5.4% 1,603 109.5%
マツダ 991 100.1% 31,203 108.3% 1,042 1184.1% 3.3% 816
三菱自 937 117.0% 20,389 140.1% 873 4.3% 740
SUBARU 734 85.3% 27,445 97.0% 905 88.3% 3.3% 700 91.5%

 全体としては減収減益。厳しい環境下なのでそれ自体はともかく、販売台数と営業利益の下げ幅が大き過ぎるし、それを踏まえての見込みが極めて楽観的。V字回復戦略の自信があってのことなら素晴らしいが、詳細を知らされないまま見ていると怖い。

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 スバルに一体何が起きているのか「通期実績 営業利益増減要因」をチェックしてみよう。

 毎度のごとく、左端のグレーの柱が前期営業利益の実績。右端の水色の柱が当期営業利益の実績だ。当期の各社同様「為替レート」でプラス。ここは421億円。

 「諸経費」の内訳はどうなっているか? 「製造固定費」がマイナス131億円。製造固定費の枠組み中の左、「SUBARU」が国内生産で、右の「SIA」が米国インディアナ州での生産だ。ここは細かく見てもあまり意味はない。強いて言えばSIAの「外製型費」のみ。あとは全部負け越しだ。同じく「諸経費」の中の「販管費」がマイナス169億円。これは各地域ディーラーのコストダウンとその支援が中心。台数がダウンしたのにコストがかかるとはこれいかに。

 右隣の「売上構成差等」は後述するので、一度飛ばして「原価低減等」の項目。ここは極めて重要だ。原価低減と言うとどうしても「下請けいじめ」の印象が強いだろうが、そうではない。長年交渉に交渉を繰り返してきた原材料費は、もう値引きの余力はさしてない。仕入れではなく、原価低減の本質は「加工の領域」、つまりつくり方に工夫を凝らし、技術力で原価を下げるのだ。実際、資料の細目を見ると「原価低減」と「原材料・市況」は別のくくりになっている。

 規模が違うとは言え、トヨタはこの項目で毎年確実に3000億円ずつプラスを出している。トヨタが相手ではケタがいくつか減るのは当然としても、原価低減でマイナスは形が悪すぎる。カイゼンする技術力がないということになるからだ。

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