肝心の小売り実績(台数)は前年比で93.2%。微妙なところだ。小幅とは言いがたいが深手でもない。悪いなりに食い止めている感触である。第4四半期は押し戻してギリギリ小幅といえる範囲まで回復した。このまま流れが変わっていくなら、大丈夫と言いたいところだが、どうだろうか? ホンダ自身のコメントは以下の通り。

【市場】半導体の供給不足による影響などにより、前年度を下回る
【Honda】前年度を下回るものの、Vezel の好調な販売などにより市場を上回るペースで回復
N-BOX:2021年度新車販売台数第1位

 これを読む限り、「市況全体の減産に対して、新型車の商品力で立ち向かった」のだなと受け取れる。台数のダウンは甘んじて引き受けつつ、魅力のある新車で「構成(1台あたり売り上げ)」を高めていくという作戦。商品に引きがあっても部品不足なら作れないので、販売台数は増えない。それで台数を落としていると推察される。後述する「営業利益」が増えていれば、新型車投入による「構成」での勝負が成功したことになる。

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 日本はそういうことね、と思いつつ、ホンダの生命線である米国はどうか? 通期で見る限りやはり米国の経済は強い。市況全体も96.1%と崩し幅が小さいし、ホンダ個社では99.3%と微減をキープしている。

 問題は第4四半期で、ここは市況も崩れて84.3%。ホンダ個社ではその市況平均を大幅に下回る76.8%。これをどう見るか。

 説明文にあるのは、需要は堅調とのことで、消費者は買う気があると見ている。一方マイナスの要因を示すのは部品不足というワードだけなので、これが急速に深刻化して生産への影響が悪化しているのであれば、ホンダのコントロール外で問題が発生していることになり、しかもかなり厳しい下落幅である。心配になる。当期第4四半期に急落したのは、今期(2023年3月期)の第1四半期に引きずらないのかについての説明は「半導体の供給不足による影響などは残る」とだけ。急落の原因となるほどの部品不足がどうして起きたかを知りたいのだが?

中国のEV投入の効果は?

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 さて、ホンダは今、売り上げに占める中国の比率がかなり高くなっている。数字を見れば明らかなように当期の米国は通期で138万6000台。対して中国は152万5000台。もはや純粋な台数は中国のほうが多い。ただし、ホンダの中国法人は現地企業との合弁企業であり、プラスもマイナスも持ち分法の規定比率に限った影響ということなる。あまり過大評価してはいけない。やはり生命線は米国。だが、それでもすでに中国はその米国の半分以上の加重で見るくらいには影響が大きくなっている。

 その中国では、通期で全需を大きく下回った85.0%。あまりよろしくない。しかしこっちは米国と反対に第4四半期では押し返して90.7%に戻している。いや、上がったり下がったりでいよいよ分かりにくい。

 「2022年度 販売見通し」では、新型BEV(バッテリーEV、以下EV)の「e:NS1」と「e:NP1」の投入に期待を寄せているのが見て取れるが、それによってEVのマーケットを総取りできるくらいの影響があるならともかく、順当な予測姿勢を取る限り、EVは決算上の数字を好転させるほどの数は出ないし、バッテリー価格高騰の中で利幅的にも難しい商品。むしろ、中国の4、5月を見ると、市況的には上海のロックダウンの影響が強く出ることで、悪化する可能性のほうが強いと思われる。

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 一方でここしばらくホンダの利益率の救世主だった「二輪事業」はトータルでは堅調。特にマーケットの大きいインドネシアの伸びは今後に期待できる。と、通期の数字を見て思うのだが144.2%の爆増が、第4四半期には突如94.5%に。もやもやするが、ここまでの数字を見ると、前期通期はロックダウンの影響が強く、比較対象としての昨年が落ち込んでおり、それが第4四半期に回復したのだろう。なので、回復生産が始まってため込んだ需要分を一気に爆上げした前期の第4四半期と当期の第4四半期を比べると旗色が悪い。当期に急落しているのではなく、前期に急増していたと見るべきだ。……うーん、右側のスペースには、そういうことを書いたほうがいいと思う。

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