先代のマンモハン・シン首相、その路線を継承するナレンドラ・モディ首相による2世代にわたる経済開放政策によって、世界中の自動車メーカーがインド進出を果たし、ピーク時に比べればシェアは後退したものの、インド市場で王座を守っている。スズキは「日本に次ぐ第2の母国がインド」という極めて特徴的な背景を持っているのだ。すでにインドでの生産数は日本のそれを上回ってさえおり、スズキにとってはまさに生命線となっている。

(資料:スズキ)
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 前述の通り、日本の多くのメーカーは日本と米国を両輪に、場合によってはそれに中国が加わるという状況で、例えばコロナ禍にしても日米中の影響を強く受けるが、スズキだけは日印の影響を受ける。だからスズキの決算では「マルチ・スズキ・インディア社の業績」が1ページを割いて説明される。

インドでいかに稼いだか?

(資料:スズキ)
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 ということで、確認しておくべきは日本とインドのマーケットだ。

 まずは日本。直近3期の流れを見ると、販売台数はマイナス。ただし、それは部品供給不足による減産の影響となっている。トヨタやマツダのように、高付加価値化して台数が減っても利益が出る方向へシフトしていければいいのだが、スズキは元会長が「軽自動車は貧乏人のクルマ、(軽の)スポーツカーは要らない」と断言したように(13年11月、東京モーターショー)、石にかじりついてでも庶民の味方であり続けようとする会社。価格に転嫁できる余地は少ない。となれば、部品供給の問題を解決して、生産台数を回復させていくしかない。しかしながらそちらの方向は水物としか言いようがない。何らかの突破口をスズキが切り開けるのかどうかが問われる場面だ。

(資料:スズキ)
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 さて、いよいよインドである。インドでは昨年対比で上向きの傾向が出ている。小幅ではあるが光明を感じる。なぜそうなったかが面白い。「輸出の伸長」の記述を抜き出してみよう。

・当期はマルチスズキからの輸出台数が23万8376台と過去最高を記録
・おもな輸出モデルは、Baleno、Dzire、Swift、S-Presso及びBrezza
・輸出先は南米、中近東・アフリカが主力で、100か国以上
・当期は輸出の増加もあり、南アフリカ市場でのシェアが3.9%から6.9%に拡大

 部品供給問題が発生している中でなぜ輸出が増やせたのか? そもそもインドでは自動車マーケットはまだ急成長中で、生産キャパシティーが足りていない。「Baleno(バレーノ)」などはインドで生産して日本で売るつもりだったモデルだが、インド国内の引きが強すぎて輸出に回せず、ほぼ日本に入ってこなかった。

 ……という数年前の記憶に照らすと、今回輸出に回せたのは不可解である。なのでスズキに問い合わせた。

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