この図で注目する価値があるのは、右側の欧州の「固定費の削減」だ。台数を追い求めるのをやめて、生産拠点を整理した結果、コストダウンが進んだことが重要だ。
「NISSAN NEXTの進捗」は重要ページ。特に上半分は今回の発表のキモになる部分だ。
まず1の「最適化」。利益率の悪いモデルを中心に、商品ラインナップを削減した。今の日産の資力で開発できるモデル数には限りがあるので、長期的に重要なモデルを中心に新型に切り替え、それで手が回らない古いモデルを整理し、その結果不要となった生産能力を削減した。これによる固定費の削減は3500億円以上に及んだ。ここはまさに経営手腕が冴えた部分で素晴らしい。2の「選択と集中」では、限られたリソースを地域的にもモデル的にも集中させたことを述べている。
日産の言いたいことを翻訳すると、以下のようになるだろう。
・一番儲かるアメリカで、台当たり利益を高めた(フリート販売も減らした)
・これまで日本で手抜きをし過ぎたので真面目に取り組んだ
・中国は先行き不明なのでとりあえず現状維持
・攻めあぐねてきた欧州では、売れて儲かるSUVだけにして、他の車種を整理。その分生産能力を削減した。
・18カ月で12車種のコアモデルを投入した。うまく行ったかと問うなら「台当たり売上高が18%増えた」ことを評価してほしい。
売上高は増え、営業利益と当期純利益は赤字から黒字へ。営業利益率もマイナスではなくなってプラス2.9%になった。この数字そのものを褒めろと言われてもなかなか言葉を選んでしまうが、前社長時代までの酷い経営とそれを反映したボロボロの決算からすれば、あんな状態でバトンを渡されてよくここまで持ち直したとは正直に思う。現経営陣の手腕は高く評価されていい。
これだけの成果をあげていても……
さて、経営の流れが最も分かる「2021年度 財務実績」を見ていこう。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1083文字 / 全文7542文字
-
【締切迫る!】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【初割・2カ月無料】有料会員の全サービス使い放題…
特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題
ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題
日経ビジネス最新号、11年分のバックナンバーが読み放題
この記事はシリーズ「池田直渡の ファクト・シンク・ホープ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?