(資料:日産自動車)
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 まずは販売台数からチェックを始める。前期の405万2000台に対して当期は387万6000台とマイナス4%。すでに説明したように、台数については無理して追い求めるフェイズではない。ただし、今回はそうした戦略的な背景があってのダウンではなく、自動車業界全体が巻き込まれたコロナ禍による部品供給難に起因する生産制約があったことが理由だろう。すでにコロナショックが始まっていた前期との比較なので大幅にダウンしているようであれば、調達力の弱さが疑われるところだが、マイナス4%と小幅なので、ここはまあ順当なところだろう。

 右側の図表は、ネット契約が増えたということをアピールしているのだが、長期的にはいざ知らず、当期においては全体に与えるインパクトはほぼないようなものなので、気にしなくていい。

(資料:日産自動車)
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 日産の決算説明資料は、定点観測的にできておらず、毎年違う切り口なので、大変分かりにくい。正直なところあちこち恣意的な資料になっていて、引っ掛け問題みたいに感じる部分が多い。苦言を呈すれば、こういう資料の作り方は早急に改めた方がいいと思う。

どこかモヤっとする決算資料

 まずは左半分から。「商品に対するお客さまの支持」は「セグメントシェア」という定義が曖昧な中での比較であまり感心しないが、エビデンスはともかく、日産は「お客様に支持されるようになりました」ということが言いたい図である。冒頭で筆者が述べた「顧客の満足度を支えるパフォーマンス」が向上しているという意味で、図の定量的な意味は不明ながらも、説明通りそういう効果が出ているのであれば、それは方向性として正しいと言える。

 「量から質へ」は台当たり売上高を示す図。これは「構成」がよくなったということなので、大変よろしいのだが、やはり図が微妙。「数値が、なぜ前期のFY20(2020年3月期)との比較ではないのか」を考えると分かるだろう。FY19はコロナ禍以前で、当然値引きをして販売していた時期。FY20以降、部品不足で需給が逼迫して、値引きの必要がほとんどなくなっている。なので19%向上したと言われても、経営努力で値引きを堪えて増やしているのか、需給逼迫で勝手に増えているのかがFY19との比較では判然としない。まあ一応は増えているのであればOK、というしかない。

 「健全な販売チャネル構成」ではフリート販売の減少を表している。ここもコロナ禍で減産を余儀なくされれば、利益率の低いフリート販売を優先するわけがないので、FY19との比較で減るのは当然。実際、前年比で大きく下げているのはFY21ではなくFY20のタイミング。経営的意志によるものか結果論なのかが曖昧ですっきりしない。ただし下がっているのが朗報であるのは変わりない。

 右側半分に移ると、上の図では「放置していた国内市場に新型車を投入して、お客さまに支持された」ことと、その結果として「台当たり売り上げが増えた」ことを述べている。セグメントシェアの指標が不明瞭なのは先に述べたのと同じ。また台当たり売上高の38%向上という数字はスゴいが、2012年にデビューしたノートを2世代分に当たる8年振りにモデルチェンジした結果なので、どう評価すべきかは迷うところ。そしてここの図ではFY20とFY21の順当な比較になっている。そういうところが……。

 下段左は国内マーケットの平均車齢がグッと下がりましたという話。ここは疑問の余地なく良い話で、日産の現状を改善する最重要ポイントはちゃんと実行されたことを表している。

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