(決算特集での用語の使い方、全社共通の概況などは第1回を→「2023年3月期、自動車会社に吹いた追い風と逆風」)

四輪事業の利益率が低下

 本田技研工業(以下ホンダ)の決算はあまり芳しくない着地になった。結論だけ言ってしまえば増収減益なのだが、ここ数年抱えてきた課題についてあまり進展が見られない、どころかむしろ後退している。

(出所:ホンダ)
(出所:ホンダ)
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 最大の課題は四輪事業の利益率。当該期(23年3月期)の全事業での利益率は5%だが、資料に記載されている第4四半期の3事業(二輪、四輪、パワープロダクツ)の利益率を見ると、それぞれ16.8%、0.4%、9.7%となっており、四輪事業の利益率の低さがどうしても目を引く。前期(22年3月期)では14.3%、2.5%、11.8%だったことを見れば、前期(22年3月期)以上に二輪事業への依存度が高まっており、形は悪い。

 ちなみに乗用車メーカー7社の決算において、ホンダとスズキは少々特殊。クルマだけを造っているメーカーではないからだ。他社との比較をしようとするなら、四輪事業だけ抜き出して比較したいところだが、直接部門だけの比較ならばともかく、間接部門の経費の案分をどうするかを考え始めると、ちょっと着地点が見つからない。本来決算というものは、社業トータルでの評価をするものなので、これはあくまでも「会社」としてのホンダを見る資料である。決算資料に部門別表記がある部分に関しては可能な限りの抜き出し評価をするが、それにはおのずと限界があることはお含みおきいただきたい。

 さて、それでは恒例の基本的な数字を挙げていこう。

 グループ販売台数(カッコ内は対22年3月期、以下同):368万7000台(90.1%)

 売上収益:16兆9077億円(+2兆3550億円)

 営業利益:8393億円(-318億円)

 営業利益率:5.0%(-1.0ポイント)

 当期利益:6952億円(-118億円)

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 当該期通年での四輪の販売を地域別に見てみると、台数の多い順から、中国が124万台、米国が100万2000台、日本が56万1000台。それぞれ昨年比で、81.3%、72.3%、98.0%。販売台数の多い米中で落ち込みが大きいことが分かる。1~3月の第4四半期でみると米国は持ち直している様子が見えるが、中国はまだ悪化している。

 他社の当該期決算では、上海のロックダウン(都市封鎖)の影響が大きかったケースが多いが、ホンダの場合少し事情が違うようで、ロックダウン終了後も持ち直していない。ホンダ自身は、中国での減税措置終了による影響が大きいと分析している。

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