なので、短期的には円安で直接的に損をするわけではない。が、輸入品の高騰が続けば、食料やエネルギー価格もインフレが進む。結果、消費者の手元資金が減って、国内販売への影響が出る。トヨタにしてみれば、そうなる前に日本銀行も利上げスタンスを取って、為替をある程度のバランスに保ってもらった方がいい。メーカーは働いた分確実に儲かることを望んでおり、運が左右する為替領域でのラッキーパンチに期待した経営をしてはいない。業績を運任せにしたいわけではないのだ。

 次はいよいよ山場である。「原価改善の努力」と「営業面の努力」の2項目だ。これらが自動車製造業の原動力であり、結局、ここが決算を支配する。

 トヨタの十八番の「原価改善の努力」はマイナスに沈んだ。それも昨年のプラス1500億円からマイナス3600億円へと、大幅に拡大している。トヨタは「ものづくり」の改善で例年ここで3000億円を目安にコストを削減しており、この決算でも2800億円のプラスを発生させた。

 ここは重要なポイントなのだが「乾いた雑巾を絞る」と言われるコスト削減で、トヨタは毎年毎年3000億円の原価低減を続けている。ついでに言えば、「昨年も資材高騰に喰われなければ、プラス3000億円だっただろう」というのが、取材で得た感触だ。

 という話をすると「すわ下請けいじめか」ということになるのだが、立場を笠に着た圧迫的値下げ要求で、果たして3000億円も下がるかどうか、常識で考えてみよう。それも毎年だ。そんなことをしていたとしたら、サプライヤーはとっくに全滅している。

本当に「過剰」な品質を求めない工夫

 トヨタはありとあらゆる方法で、原価改善を繰り返してきた。原則に立ち返れば、部品単価は「原材料+加工費」でできており、その構造はフラクタルに続いている。鉄鉱石だって自分でスコップで掘ればタダだ。しかしスコップを買わなきゃならないし、日当だって欲しい。スコップ代と日当が、次の段階の「原材料費」になる。

 お気づきの通りスコップだってもっとさかのぼれる。だから「原価」とはそもそも連続階層構造における人件費の積み重ねである。ということは、その階層構造の全てにおいて丁寧に作業工数を減らしたり、効率を改善すれば原価はほぼ無限に下げられる理屈になる。

 だからトヨタは工数の削減や効率の改善を追求し、自社のみで活かすのではなくサプライヤー各社を訪問して、その手法がサプライヤーで活かせないか確認して回る。それこそが3000億円ずつ毎年原価を下げる原動力だ。

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