またコロナ前の19年4月~20年3月の期との比較を見ると、まだ通常時の生産台数には至っていないことが分かる。つまり、当期決算の営業利益からは「十分以上の回復をやり切った」ように見えるが、台数はまだ回復余地があるわけだ。

 利益は台数と台当たり利益の積で決まる。少なくとも生産台数の部分には、今後、生産の制約が解決すれば、全地域で伸び代があることになる。

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 次は連結決算要約のチェック。ひと目で分かるのは増収増益決算ということ。という以上に、全項目がプラス。それも重要項目での上げ幅は驚異的だ。「ありえない」という意味では、予想だにしない悪材料に不意打ちされ、その初太刀を凌いだのみならず、第2四半期からすぐに反撃に転じた前期決算の方が強かったが、当期は次々と種類の違う問題が発生したにもかかわらず、粛々とそれをこなしてこの数字なわけで、余裕さえ感じる。

 当期営業収益は31兆3795億円。前期に4兆1649億円積み増している。営業利益は2兆9956億円で、わずかに3兆円に届かなかったが、前期に対して約8000億円の上げ幅を記録した。コロナ禍が完全解決したどころか、まだまだ問題が山積している中で、どうしてこんなことが可能だったのかは、しっかり考察する必要がある。

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 その分析のベースになるのが、連結営業利益増減要因だ。左端のグレーの柱が前期利益で、右端の赤い柱が当期利益。ちなみにその間に項目別に増減が記されるが、赤はプラスでグレーがマイナスを示している。

宝くじに当たった面もあるが

 地色が敷かれた中央の3項目は、経営のかじ取りの結果であり、その両サイドは外的要因。トヨタの経営コントロール範囲外の「もらい事故あるいは宝くじに当たった」的な話である。当期に関してはそれは宝くじで、追い風になった。

 「為替変動の影響」では、急速な円安が為替差益6100億円を生み出している。従来、国際的波乱があると円高に動いてきた為替だが、当期は主に、米国のインフレ抑制を目的とした利上げ政策の影響によって、円が下がったことで、日本の輸出系製造業はその恩恵を受けた形になった。

 ただし、トヨタが円安を喜んでいるかと言えばそこはちょっと違う。トヨタのみならず自動車メーカー各社が望んでいるのは為替の安定であって、上がるにせよ下がるにせよ急激な変化は好まない。「円安で利益が増えるからいいだろう?」と思う人はいるかもしれない。確かに円安でクルマの輸出販売利益は増えるが、輸入依存の原材料価格は上がる。それはそれで防戦しなければならない以上、それらの調整で仕事が増える。

 原則論としては差し引きでは製品輸出価格のインパクトの上げ幅の方が大きい。原材料を加工して付加価値を上げて売るという特性上、付加価値が上がった分にも為替差益が発生するからだ。

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