(決算特集での用語の使い方、全社共通の概況などは第1回を→「2023年3月期、自動車会社に吹いた追い風と逆風」)

まずは復活を言祝ぎたい

 日産自動車(以下日産)は、増収増益の決算発表を行った。皮肉でもなんでもなく、ご同慶の至り、としか言いようがない。

 他社の決算分析とはちょっと形が違うが、過去5年間の業績推移から話を始めたい。日産は2019年、20年には本当に危機に瀕(ひん)していた。当該期(23年3月期、日産の表記では22年度)決算は、そこからの立ち直り局面であることを念頭に置かないと、正しく評価できない。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
(出所:日産、以下同)
(出所:日産、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

 まずは「グローバル販売台数」。これはキレイな右肩下がり。押し並べてどのマーケットでも毎年減って、背筋が寒くなるような実情を示している。

 次に「連結売上高」。先に販売台数を見た後なので、少しホッとするが、17年から20年(18年3月期~21年3月期)までの推移をリアルタイムで見ていた最中は、もう恐怖でしかなかった。それを21年になんとか反転させ、22年に続伸させた。今回の決算分析では、この回復劇を日産はどうやって成し遂げたのかということがテーマになるわけだ。

 ダメ押しにもうひとつ。「連結営業利益」を見ると、20年まではまさに逆落とし。とどめに2年連続で赤字決算。20年の営業利益率は-1.9%まで落ち込み、言ってみれば「損をするために働いている」ところまで行ったわけだ。

 日本の自動車産業を、ひいては日本経済を応援したい立場の筆者からすれば、日産のピンチに悲鳴を上げながら決算記事を書く日々であった。

次ページ 販売台数を減らして増収増益